経団連くりっぷ No.74 (1998年3月12日)

なびげーたー

日ロ善隣関係をもって21世紀を迎えたい

国際本部副本部長 江部 進


この程ロシアを訪問した小渕外相がエリツィン大統領はじめロシア首脳とクラスノヤルスク合意の実現と4月の両国首脳非公式川奈会談開催で合意した。

昨年11月初めにクラスノヤルスクで行なわれた日ロ非公式首脳会談で、経済関係の拡大のための橋本・エリツィン・プランと2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことが合意された。近年わが国政府が対ロ関係改善のため、政治、経済、安全保障、文化など各般において対話と交流を促進させる方針を採っている中で、クラスノヤルスク合意はこの路線に適う大きな成果で、日ロ関係改善に向けてかつてない良好な雰囲気を生み出している。

その後11月中旬の日ロ外相会議でクラスノヤルスク合意事項が確認され、実施のため精力的に作業を進めることになった。橋本・エリツィン・プランについては、まず、貿易保険のロシア民間銀行の保証による引き受け(これまではロシア政府の保証などが条件)、投資保護協定に関する協議、政府間のエネルギー対話の強化、企業経営者養成計画に基づく第1陣研修の早期実施、シベリア鉄道復興協力関連ミッションの訪日などが進められることとなった。同プランは今後の日ロ経済関係を促進していく上での基礎となりうるもので、ロシア側はプランの実現に大きな期待を示している。

プラン推進の重要な場となるのは、政府ベースの「貿易経済に関する政府間委員会」であるが、実施にあたっては民間の意見を十分反映させることを含め官民の協力が緊要である。日本ロシア経済委員会(委員長 安西邦夫東京ガス社長)では、すでに投資保護協定、シベリア鉄道復興関連ミッション、極東関係会議など幅広く政府と緊密な連絡と意見交換に努めている。また会議やロシアの政界・経済界要人とも率直な対話を行なっている。

改めて指摘するまでもなく日ロ経済関係の水準は低い。貿易額(1996年)は日本においては総額の1%にも満たないし、ロシアにおいては3%未満である。また、ロシアが受け入れた外国投資に占める日本のシェアは極めて小さい。その原因の多くはロシア側にあることはロシア側も認めている。つまり、民主化や市場経済移行に伴う混乱、諸法規の未整備や複雑で負担の大きい税制、中央と地方の不透明な関係などである。日本側からすれば、最近解決を見た債権の支払い遅延問題も大きな障害であった。他面、ロシア側は、欧米企業に比し日本の企業の慎重な姿勢に苦言を繰り返している。

しかしながら、わが国企業のロシアに対する関心は着実に高まっている。5年前に比べ、メーカーのモスクワ駐在員事務所は倍増しており、また企業幹部のモスクワ訪問も増えている。橋本・エリツィン・プランを含むクラスノヤルスク合意が着実に実行され、日ロ関係が各般にわたって発展し21世紀を迎えることを切に期待したい。


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