経団連くりっぷ No.74 (1998年3月12日)

四国地方政策懇談会/2月26日

構造改革の推進と地域の活性化


経団連では、四国経済連合会(四経連)との共催により「構造改革の推進と地域の活性化」をテーマに、高松市において政策懇談会を行なった。四国側からは山本会長はじめ地元経済人100名余が、経団連からは、伊藤・古川・前田の各副会長および高原新産業・新事業委員長代行が参加して、税財政改革や規制緩和、地域連携の推進などについて懇談した。

  1. 開会挨拶
  2. 山本 博 四経連会長(四国電力会長)

    山本四経連会長
    四経連では昨年から「構造改革問題特別委員会」を設け、構造改革の推進に取り組んでいる。しかし四経連が加盟企業を対象に実施しているアンケートによれば、景気は下降ないし底ばいとみる企業の割合が99%もある。構造改革の前提として、当面の経済の安定を図ることが重要である。また、民間が活力を発揮するためには、それを支える社会基盤の整備が必要である。地方の基盤整備の必要性へのご理解をいただきたい。
    本四3橋時代を迎え、岡山・倉敷都市圏、松山・広島都市圏、徳島・神戸都市圏などバーチャルなコミュニティを形成していくことが重要である。歴史・文化道などのソフトを充実させ、豊かな四国の創造につなげていきたい。

  3. 基調講演
  4. 林 敏彦 大阪大学大学院国際公共政策研究科長

    法律、制度、習慣などの「構造」が定着するには、「みんな」がやっていることが重要な要素である。キーボードの配列も、制服も、多くの人がそのパターンを踏襲してきたというだけで定着している。しかし、一度「みんな」の外側に立ってみると、そこには合理的理由もなく、こっけいな構造も多い。時には外から新しい血を入れることが重要である。
    例えば大阪では近江商人が米問屋を栄えさせ、小林一三氏が宝塚歌劇を始めたように、外の血を入れて繁栄してきた。ロンドンではハロッズのオーナーが外国人となり、シティーの主役も外国の金融機関になって元気を取り戻している。
    新しい血を導入していく上で、考慮すべきは「地域の視点」である。活力ある地域づくりにあたっては、機能主義一辺倒ではなく、電子メディアでコピーできない嗅覚、触覚、味覚を刺激して、個性的な地域をつくることが鍵となる。四国が四国らしさを発揮して、歴史文化道構想などのソフトを活かしていくことができれば、本州から四国への人の流れが大きくなるであろう。

  5. 懇 談
    1. 税財政改革の推進
    2. 経団連側から前田副会長が
      1. 新たな規制緩和推進3カ年計画の策定、高コスト構造の是正など短期的な景気浮揚のみならず中長期的な構造改革に役立つ対策、
      2. 実効税率40%の早期実現に向けた法人税改革、
      の必要性を訴えた。また伊藤副会長は
      1. 地域の特色に応じた公共事業の新しい枠組みを考えるべきである、
      2. 公的年金改革は避けて通れない課題である、
      と指摘した。
      これに対し四経連からは赤澤副会長(帝國製薬社長)が
      1. 財政構造改革は中長期的政策目標として堅持すべきだが、景気回復は緊急の課題であり、あらゆる手だてを大胆に講じるべきである、
      2. 大型減税を中心とした景気対策の実施による税収の増加に伴う赤字削減効果にもっと目を向けるべきである、
      3. 公共投資の見直しにあたっては、地方の自立的発展を促す基礎的社会基盤整備に計画的、重点的に投資すべきである、
      と訴えた。

    3. 規制緩和の推進
    4. 経団連からは高原新産業・新事業委員長代行が
      1. 民間ビジネスの新しいフロンティアを切り開く規制緩和や行政のアウトソーシングを図るべきである、
      2. 新産業・新事業を進めるためにはリーダーの志の高さ、若い人材による取組みへの支援、チャレンジャーを育む職場風土が必要である、
      と述べた。
      これに対し、四経連の久米常任理事(大倉工業会長)が
      1. 規制緩和により農業、運輸、通信、流通など生産性の低い産業の構造を変革すべきである、
      2. 成長産業の育成のためには、ニーズに基づく商品の開発、他産業との連携、リスクへの耐久力が不可欠である、
      と述べ「経団連には、長期的な観点からポスト石油時代をにらんだ石油化学産業の代替システムの構築に取り組んでほしい」と訴えた。また、水木四経連副会長(伊予銀行頭取)からは「少子化対策など人口問題にも取り組んでほしい」との発言があった。

    5. 連携の推進と基盤整備
    6. 四経連の住友副会長(阿波銀行会長)から
      1. 本四3橋時代を迎え、太平洋新国土軸の早期実現、太平洋〜瀬戸内海〜日本海を結ぶ地域連携軸の形成を進める、
      2. 歴史・文化道など四国の魅力を全国に伝えることにより広域経済文化交流圏の形成につなげたい、
      との話があった。
      経団連の古川副会長からは
      1. 財政構造改革と社会基盤整備を両立させるために基盤的プロジェクトへの重点投資、民間の知恵と活力を生かした社会資本整備が必要、
      2. 歴史・文化道のように、広域的観点から地域の特色を発揮し、全国の連携のモデルとなってほしい、
      との発言があった。

    7. まとめ
    8. 最後に、林教授から「最近、東京発のニュースには楽しいものが少ない。今後も地域に密着した迫力のある発言をしてほしい」との発言があり、懇談会は締め括られた。


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