経団連くりっぷ No.74 (1998年3月12日)

アジア通貨・金融危機に関する特別検討会(座長 立石信雄氏)/2月25日

政府「インドネシア経済調査団」の成果について
─千野団長との懇談会を開催


アジア・大洋州地域委員会では、アジア通貨・金融危機の克服に向け、改めて民間経済界の考え方を整理するとともに、市場アクセスの改善、公的資金の活用、安定的な通貨制度のあり方等に関する具体的な協力策を検討し、日本政府をはじめ関係方面に働きかけるために上記検討会を開催することにしている。その第1回会合として、政府「インドネシア経済調査団」の団長を務めた野村総合研究所の千野忠男理事長(元大蔵省財務官)から調査団の成果や現地の状況等について聞いた。以下は千野理事長の説明要旨である。

政府調査団は、フィリピン、インドネシアを訪問し、日本としてどのような支援が可能かを検討するために政府関係者および日系企業と意見交換をした。外務省、大蔵省、通産省、経済企画庁、日本輸出入銀行、日本銀行などの専門家がこの調査団に参加した。
シンガポールは現在のところアジア経済危機の被害が比較的軽い国である。しかし、インドネシアが混乱すれば、地理的にも経済的にも非常に近いフィリピンへの影響は大量の難民の流入など深刻なものとなるため、インドネシアの状況の悪化を極度に恐れていた。

インドネシア経済は、特に以下の3点について深刻な状況である。第1に民間債務処理問題である。740億ドルにのぼる民間債務の処理は急を要し、ラディウス委員会による個別の取組みが開始されている。この国の債務処理の難しさは、かなりの額が種々雑多な企業の債務であり、交渉するにも韓国のようにまとめて行なうのではなく、銀行と企業がそれぞれ個別に交渉をしなければならないことである。
第2の問題は貿易金融についてである。L/Cの開設が困難となっているため、輸出のための部品の輸入のみならず、医薬品や食料品といった生活必需品が不足する状況になっている。この生活必需品の不足こそが第3の問題点である。コメ、鶏肉、卵、ミルク等の食料品や灯油等の価格が高騰し、特に地方における物不足が顕著になっている。このことが現在各地で起こっている暴動の原因にもなっている。

スハルト大統領はこのような深刻な状況を認識しており、一刻も早く国民の苦しみを解消するために、G7からのアドバイスを得たいとしていた。その期待に答えるためにも、われわれはG7蔵相・中央銀行総裁会議前に具体的な対応策を含む報告書をまとめた。その中で、輸銀資金、貿易保険、生活必需品支援等を組み合わせ、できるだけ具体的な形で早急に打ち出すことが必要であると報告したが、それを受ける形で、20日に「東アジア経済安定化等のための緊急対策について」が閣議決定された。


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