経団連くりっぷ No.74 (1998年3月12日)

流通委員会企画部会(部会長 二木英徳氏)/2月18日

アメリカの大型店開発の仕組みと日本の大店規制の問題点


流通委員会企画部会(部会長 二木英徳ジャスコ副会長)は、日本での流通分野にかける規制緩和の検討の一環として、日本で大規模商業施設の開発に携わっているAMIジャパンのジョン・ディーフェンバック副社長から、米国での大規模店舗開発の仕組みと日本の大店規制の問題点について説明を聞くとともに懇談した。

  1. ディーフェンバック副社長説明概要
    1. 米国での大規模店舗開発の仕組み
    2. 大規模商業施設を建設しようとする場合、開発事業者は市や地方の都市計画機関とプロジェクトについて協議する。その際、開発事業者は、当該プロジェクトの経済的効果(税収や雇用増等)の予測や公益を示す。
      米国での開発規制は公衆衛生、福祉、経済、環境等あらゆる面を考慮したものとなっている。地域設定に関する行政手続は明瞭であり、充分な情報公開がされるため、地元住民や政府機関等が各々の立場から意思決定プロセスに参加することができる。
      また、土地使用承認までの行政手続に関する権限を集中させるために、都市計画局等をDesignated Agency(指名機関)として指定し、関係各部の意見を調整させている。
      大規模店舗のみを特に規制する法律はなく、都市計画法や建築基準法によって一定の制限を受ける他は、建物の規模、営業日数、営業時間等への制限は課されない。
      土地利用は基本的に、市によって規制されており、例えば農業用地等であっても、その地域の基本的設定と合致していれば、それ以外の利用が認められるのが通常である。

    3. 大規模小売店舗立地法について
    4. 大店法に代わって制定されようとしている大規模小売店舗立地法については、どのようなプロセスで、どのような内容の出店協議が行なわれるのか不明な点が多く、大店法以上の規制になることが懸念される。地方自治体の恣意的な運用を防ぐために、出来るだけ明確な基準を設定すべきである。

  2. 意見交換
  3. 経団連側:
    米国での開発規制・手続は、具体的にどのようにオープンであるのか。
    AMI側:
    特に規制主体である市レベルでは、事務手続を一般に公開しており、客観的な基準も設けている。また行政指導についても、指導を受けた事業者等が法廷で争うことが多く、その根拠や正当性は厳しくチェックされる体制になっている。

    経団連側:
    米国での、大規模開発に対する行政の援助はどのようなものがあるのか。
    AMI側:
    土地買収や雇用の支援、税制上の優遇措置や、開発による税収増を見越した融資(tax increment financing)、補助金等がある。
    特異な事例として、フロリダ州政府がディズニーワールドの開発予定地域をひとつの行政地域(市)として指定し、行政権限に基づいて用地買収を助け、インフラ整備を行なったことがある。


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