経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

なびげーたー

議員立法の進展と今後の課題

経済本部長 遠藤博志


経団連が強く働きかけてきた議員立法が続々と実現し、あるいは、実現する見通しである。最近の状況を概観すると共に今後の課題を探ってみたい。

経済法制問題をめぐる環境は、ここ1年で、大きく変化している。そのひとつは、議員立法が活発化していることである。経済社会の変化が急激な時代にあっては、それに対応して法制度の改革を臨機応変に行なう必要があり、議員立法による機動的な対応が、有効であるとの評価が高まっている。
財政の制約がある中で、議員立法をうまく活用すれば、財政出動を伴わない効果的な経済対策を打ち立てることができるとの認識が広まっている。昨年5月、経団連では、自民党はじめ各党に働きかけ、利益消却の特例法とストック・オプションの一般的導入を実現したところである。これにより、すでに38社が利益消却を行ない、44社がストック・オプションを導入しており、かなりの成果があがっていると思われる。

自己株式消却の特例法案等成立へ

また、今年に入ってからも、

  1. 資本準備金を財源とする自己株式消却の特例(利益消却特例法の改正)、
  2. 土地再評価法案、
  3. 定期借家権の導入(借地借家法の改正)、
  4. 監査役制度ならびに株主代表訴訟制度の見直し(商法および監査特例法の改正)、
について、今通常国会での議員立法による成立を関係議員に強く働きかけてきた。その結果、「1.」と「2.」については、3月9日に国会に上程され、3月末までに成立する見込みである。「3.」については、目下与党内で調整中であり、5月にも国会に上程される見通しである。「4.」についても、今後与党内で調整が進められるものとみられている。

今後の議員立法の課題

以上のように、議員立法が順調に実現しているが、これまでの経験から議員立法にはかなりのエネルギーを要する。そこで今後この動きを定着化させていくためには、いくつかの課題があるように思われる。
第1は、政党および国会における議員立法体制の整備である。例えば、議員の政策スタッフの増強、議院法制局の強化である。
第2は、経済界側のサポート体制の強化である。例えば、経団連、21世紀政策研究所等における政策立案・法案作成能力の向上が必要であろう。
他方、議院内閣制の下では、今後とも内閣が法案を提出することが基本であると言われるが、そうであるとすれば、法務省、法制審議会は、従来型の対応を改め、機動的な審議の体制を組む必要がある。作業部会を弾力的に設置し効率的に審議を進めたり、関係の団体、研究所において問題の整理から要綱案のとりまとめを行ない、審議のベースとすることも一案と考える。
自民党では、司法制度改革の検討に着手したが、以上のような立法をめぐるインフラ整備についても、積極的な取組みがなされることを期待したい。


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