経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

アムネスティ・インターナショナルとの懇談会(座長 渡邊特別顧問)/2月27日

「企業活動と人権」について聞く


アムネスティ・インターナショナルのムンゴベン・アジア太平洋地域プログラム部部長より、「企業活動と人権」について聞いた。アムネスティ・インターナショナルは、信念や信仰、人種、言語、性等を理由に囚われた「良心の囚人」の釈放、拷問や死刑の廃止をはじめとする人権擁護活動を世界的に展開している世界的に有名な人権NGOである。

  1. ムンゴベン部長説明要旨
  2. アムネスティ・インターナショナルはいかなる政府、政治的信条、宗教的信条からも独立し中立な立場である。人権侵害を理由とする経済的制裁に対しても賛成も反対もしない。また、われわれは各国の人権状況をまとめた報告書を毎年出版しているが、この報告書においても情報の正確性・中立性を徹底するために、使用する用語や文章に細心の注意を払っている。
    企業とNGOの関心はかけ離れていると思われるかもしれないが共通する点もある。法による支配、透明で開かれた政府、司法の独立、情報開示など人権の擁護に必要な要素は同時に持続可能な成長と安定したビジネスの環境を支える要素でもある。この点で人権擁護と企業の関心は収斂する。
    今後、企業にとって人権に無関心ということは、企業のイメージを悪くし、大きなマイナス要因となる。企業は企業内での人権擁護とともに、企業のもつ多大な影響力を利用して政府や武装集団による人権の迫害を防ぐ責任も有している。
    企業が採るべき具体策として、アムネスティが作成した「人権に関する企業の基本原則チェックリスト」は以下の通り。

    1. 人権に関する企業や経団連等経済団体の方針を持つ。
    2. 企業の活動が人権にもたらす影響を評価する枠組みを設定する。
    3. NGOとの交流を推進する。
    4. 社内で人権教育を実施する。
    5. いかなる差別もしない。
    6. 公平な労働条件を整備する。
    7. 労働者の表現、結社、集会の自由、団体交渉権を認める。
    8. 奴隷的/強制労働をさせない。
    9. 保安は国際人権基準に則る。
    10. 軍や警察が使用する商品やサービスを提供する企業は、これらが人権迫害に使われないよう措置を講ずる。
    11. 人権に関する監査制度を確立する。
    12. 人権問題について政府と連絡を取る。

  3. 懇談要旨
  4. 経団連側:
    ミャンマーが受けているような経済制裁は、貧困を促し外部とのコンタクトを制約してしまうため、人権保護とは逆の効果をもたらすと思うがどうか。
    ムンゴベン部長:
    経済制裁は国家間の政治問題であるためアムネスティとしては関与しない。しかし、経済的権利の迫害につながる場合は、企業に対してその影響力を行使し人権の推進に努めるよう要請している。


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