経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

中国地方政策懇談会/3月4日

行財政改革の推進と地域の活性化


経団連では、中国経済連合会(中国経連)との共催により「行財政改革の推進と地域の活性化」をテーマに、山口県宇部市において政策懇談会を開催した。経団連からは樋口副会長、今井副会長ほか幹部役員が、中国経連からは多田会長はじめ地元経済人約130名の出席を得て、種々懇談を行なった。

  1. 開会挨拶
  2. 多田 中国経連会長(中国電力会長)

    多田 中国経連会長 わが国経済は、消費税率引上げによる影響、金融システム不安、アジアの経済危機などの複合要因により、景気が悪化している。中国地域においても極めて厳しい状況にあり、当面は経済を立て直すための景気対策と金融対策が必要である。さらに、長期的な観点に立った経済活性化策の実施が求められる。
    中国地域が新たに発展を遂げていくためには、従来からの多様な産業集積を活かした産業振興を行なうとともに、自動車道をはじめとする交通基盤整備を進める必要がある。また、活力ある地方を実現し、真に豊かな日本とするためには、「官から民へ」、「中央から地方へ」の理念に基づき、規制の撤廃・緩和ならびに地方分権の推進が重要となる。

  3. 基調講演
  4. 吉田和男 京都大学大学院教授

    行財政改革ならびに地方分権は今日の日本を改革するための重要な課題である。現在、政府債務は500兆円を超える。景気の停滞感が強まる中で、減税、公共投資などの景気対策を求める声が大きくなっているが、これまでの経験からすると、大きな効果は期待できない。景気対策は癌の薬のように、効果と副作用がつきものである。現在は副作用が蓄積しすぎており、いつ爆発するかわからない状況にある。
    行政改革は橋本内閣の重要な柱であるが、改革の内容はいまだ見えない。例えば、国土交通省のような巨額の補助金をコントロールする省庁を作ったにもかかわらず、公共投資をどう整理していくかが明確ではない。また、行革全体に地方分権の発想が乏しいなど、これまでのキャッチアップ体制を前提とした中央集権体制が残存している。
    現在、世界経済は大きく変化しており、日本型経営システムも改革が求められている。他方、民間企業の活力なくしては、21世紀の日本は考えられない。今は、政府、民間ともに改革を着実に進めることが重要である。

  5. 懇 談
    1. 行政改革の推進
    2. 経団連側から今井副会長が
      1. 国・地方を通じた行政のスリム化により国民負担の軽減を図ることが不可欠、
      2. 新たな規制緩和推進3カ年計画などに抜本的な規制緩和策が盛り込まれるよう引き続き取り組む、
      3. 今後の日本経済の先行きを明るくするためには、規制緩和、中央省庁再編、地方分権等は不可欠であり、経済界に求められる役割も大きい、
      と訴えた。
      中国経連からは林副会長(山口県商工会議所連合会会頭)が
      1. 官から民へ、国から地方への基本理念に基づき、簡素で効率的な行政と分権型の行財政システムを構築すべき、
      2. 地方分権の受け皿整備、地方における効率的行政運営を図るためには、市町村合併を推進するなど自治体の行政体制の強化が求められる、
      と指摘した。
      また、会場からは「首都機能移転を行財政改革や地方分権などと一体となって推進すべきである」といった意見も寄せられた。

    3. 規制緩和を活用した新産業・新事業の創出
    4. 経団連の樋口副会長は
      1. 経団連では、ベンチャー企業ならびに企業の新規事業展開のための環境整備に取り組んでいるが、ニュービジネスの育成には、行政や金融機関の支援が不可欠である、
      2. 中国地域は、ニュービジネスへの取組みが活発であり、ラジコンヘリで有名なヒロボー(株)をはじめ元気のある企業が多く、全国の見本となる、
      と述べた。
      中国経連の竹林副会長(マツダ会長)からは
      1. 中国経連では、中国地方産業振興ビジョンをとりまとめ、地域経済の活性化に取り組んでいる、
      2. 新産業・新事業の育成には、技術、資金、人材面等での仕組みづくりが必要である、
      との発言があった。

    5. 財政構造改革の推進
    6. 経団連の内田事務総長が
      1. 構造改革と景気回復を両立させるためにも、98年度予算の年度内成立に全力をあげるとともに、引き続き、税制改革に取り組む、
      2. 地域の特色に応じた公共事業の新しい枠組みを考えるべきである、
      3. 本格的な少子・高齢化社会にあわせて社会保障制度を改革する必要がある、
      と訴えた。
      中国経連からは、大橋国・地方問題副委員長(西京銀行頭取)が
      1. 中長期的には、財政構造改革を推進することは必要であるが、当面は景気回復を軌道に乗せ、税収基盤の強化を図るべき、
      2. 地域の自立を促進し、活力ある地域社会を構築するためには財政構造改革下においても基幹的なインフラ整備は不可欠である、
      と訴えた。
      これを受けて会場からは「地域におけるインフラ整備の重要性とまだまだ整備が遅れている現状をご理解いただきたい」との発言があった。


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