経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

行革推進五人委員会/3月16日

中央省庁等改革基本法の早期成立を


昨年12月3日に提出された行政改革会議の最終報告を踏まえ、政府は中央省庁等改革基本法案を取りまとめ、2月17日に国会に上程した。そこで、行革推進五人委員会(経団連、日商、日経連、同友会、関経連の長で構成)では、3月16日、小里貞利総務庁長官・行政改革担当大臣を招き、同法案の審議の見通しや今後の課題等につき聞くとともに意見交換を行なった。

  1. 豊田経団連会長開会挨拶
  2. 今回の改革は国のあり方を新しい時代に対応したものとしていく上で不可欠であり、一刻も早く各省庁や独立行政法人の設置法案等の準備作業に着手する必要がある。
    早期に基本法の審議に入り、今国会で成立させるべく、一層の尽力を願いたい。

  3. 小里貞利総務庁長官挨拶
  4. 国会審議も重要な局面を迎え、基本法の成立を心配する声も一部にある。しかし予算案については、目処がついてきており、早期成立を期待している。最近、基本法の審議入りを求められる雰囲気になりつつある。
    基本法は行革推進のためのプログラム的なものである。今国会で通さなければ、2001年からの新体制への移行計画も崩れかねない。省庁再編は一挙に行なってこそ手堅く進めることができ、また、より大きな効果も期待できる。
    国会審議では細かい点も含め、徹底的な議論を期待している。例えば、行政機関の職員の定員は、2001年から10年で1割以上縮減するとしているが、独立行政法人に移管する事務事業等もあり、2〜3割程度の縮減も考えられよう。また、郵政公社の職員(約30万人)も、効率化を進めれば、将来的には25万人、20万人に減る可能性がある。

  5. 意見交換
  6. 稲葉日商会頭:
    まず予算を通すことが重要であり、経済界としても支援していく。
    基本法については徹底的な審議が必要である。法案は一切変更しないのかどうか伺いたい。また、定員削減に伴って削減可能となる歳出額や改革の実施時期も明示願いたい。

    根本日経連会長:
    行革は内外から注目されており、今国会での基本法成立に尽力願いたい。また、基本法成立後に設置される中央省庁等改革推進本部の役割は重要であり、民間有識者や学者も加えるべきである。
    今次改革の焦点は金融である。金融庁への移行は、金融ビッグバンや預金者保護の全額保証が終了する2001年に実施すべきである。また、郵貯・簡保については、民間金融システムとの整合性を確保すべきである。
    失業率3.5%のうち1%はリセッション、2.5%は構造問題とりわけ需給のミスマッチに起因するものである。新たな規制緩和推進計画では、欧米並の斡旋や仲介の自由化を願いたい。
    教育問題への取組みも重要である。内閣府に総理直属の審議会の設置を検討してはどうか。

    牛尾同友会代表幹事:
    昨今の議論は景気一色だが、改革こそ景気浮揚の入口である。
    行革会議が中間報告で郵政事業改革案を公表した時、日本株は買われたが、改革の見直しが始まって以降日本経済は失速した。改革は景気対策につながるものであり、改革の方向に沿った景気対策が望まれる。
    景気対策では、民需の拡大に向けて、民営化、規制緩和、減税の推進が必要である。そのためには、基本法成立後、内閣機能の強化を先行させ、内閣が中心となって対策に取り組むべきである。
    また、改革の推進状況をチェックする第三者機関の設置も必要である。

    藤井関経連副会長:
    基本法案は海外からも注目されており、今国会で通す必要がある。
    地方分権の推進も重要である。地方における人材の育成の必要性等指摘されている課題も、地方分権と並行して取り組むことは可能である。

    山口日商特別顧問:
    基本法は出発点であり、スケジュールをきちんと示して改革に取り組まれたい。
    行政が行なっている検査、審査を民間に移管することは望ましいが、これらを行なう機関が天下り先となっては意味がない。

    立石日経連副会長:
    行革への意気込みの希薄化が懸念される。基本法の早期成立を図り、行政のスリム化、システムの転換を実現すべきである。併せて、国民に対する広報も重要である。

    今井経団連副会長:
    重要なのは基本法の具体化、とりわけスリム化の推進である。また、内閣機能の強化や、郵政公社への移行、公共事業に関連する地方支分部局の見直し、地方行財政改革等の具体的方策についても、十分詰めていく必要がある。

    小里長官:
    1. いただいた意見は橋本総理にも伝え、努力したい。
    2. 改革の前進に資する基本法案の修正にはやぶさかでない。改革の後退につながるものは断固排除する。
    3. 改革の実効を挙げるため、中央省庁等改革推進本部とあわせて、第三者機関の設置が必要と考えている。
    4. 官主導から民主導への転換は改革の要諦である。同時に、行革に貢献した官僚が報われるシステムが必要である。
    5. 地方分権の必要性については指摘の通りである。
    6. 内閣機能強化の前倒しは検討中である。すでに、危機管理監の新設や官房副長官の増員などを先行して進めている。
    7. 改革推進に対する国民の広範な理解を得ていくことも大事である。経済界にも、気づいた点があれば引き続き指摘願いたい。
    8. 国会審議では徹底して議論を行ないたい。その中で、例えば労組等の理解も得られるものと考える。いずれにせよ早く審議入りすることが大切である。

    豊田経団連会長:
    基本法の早期成立に全力を挙げていただきたい。国会で十分議論の上、行革を推進することが筋道であると考える。


くりっぷ No.75 目次日本語のホームページ