日本ブラジル経済委員会/3月10日
ブラジル経済は、94年以降、経済安定化計画「レアル・プラン」により安定し、インフレ率も約4%と世界の平均インフレ率5.5%をも下回るようになった。最近のアジアの通貨危機の影響もブラジルは受けていない。外貨の流入も順調である。このようにブラジル経済に対する国際的な信頼感は日に日に増しており、投資家にとって魅力ある市場となっている。
96年の経済成長率は約3%であったが、農業部門は3.9%もの成長を遂げた。農業部門の生産高は約3,000億ドルで、ブラジル経済全体の40%を占めており、アルゼンチンのGDPに匹敵する。世界の農業生産の中でも、コーヒー、さとうきび、オレンジジュースが第1位、大豆、牛肉、鶏肉、とうもろこしが第2位、フルーツが第2位ないし3位の生産量となっているが、統計以上の潜在能力がある。特にフルーツ生産に関しては、ブラジルは世界のリーダーとなりうる。世界のフルーツの輸出量は約200億ドルであるが、毎年10億ドルの規模で伸びている。ブラジルは高品質のフルーツを生産する能力を持っているが、現在はこの能力を生かし切っていない。例えばチリと比較した場合、ブラジルにはフルーツ栽培に適した土地がチリの5倍もあるにもかかわらず、輸出量はチリの14億ドルに対しわずか1億ドルに過ぎない。そこで、日本企業と一緒にフルーツ生産に関するビジネスをしたいと考えている。ブラジルで生産したフルーツは、日本のみならず欧米諸国やブラジル国内にも販売する。
カルドーゾ大統領は、ブラジル北東部においてフルーツ栽培の開発支援プログラムを開始した。これは100万haの半乾燥地を灌漑し、フルーツ栽培を行なうものである。同地域を選んだ理由は、競争力の面で有利であるためである。熱帯ではあるが半乾燥気候であり、年間を通して25℃〜30℃の温度、年間3,000時間の日照時間、また灌漑技術によりフルーツ栽培に適した湿度となっている。年間降雨量が900mm以下と少ないので、害虫や菌類がつきにくい。年2回収穫可能なフルーツもあるなど、高い生産性が期待できる。北半球で収穫が行なわれていない時期でも、南半球で収穫した新鮮なフルーツを消費者に届けることができる。投資を行なうにあたっても収益性の面で有利であり、生産コストも低い。
このプロジェクトにおいて、政府は全体的な管理運営、輸送・水・エネルギー・通信分野のインフラ、環境検査、植物検疫、融資、販売促進、技術開発および研究、研修および技術協力、商業分野におけるテクノロジー・センター、種子および苗の生産、生産者の組織化等を行なっている。
ブラジルにはフルーツ栽培のための最もよい条件が整っている。一方、日本には技術と農業分野での経験がある。日本人は20年程前に、1億8,000万haに及ぶ中西部のセラード開発に協力し、ブラジルを世界でも有数の大豆生産国とした。今回のプロジェクトに対する、日本からの投資を期待する。
すでにチリ、米国、ドイツ等の企業は進出してきている。