経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

第7回日本ブラジル経済合同委員会第1回代表団打合せ会/3月13日

迅速かつ強力なブラジルの危機対応


5月6、7日にサンパウロで開催予定の第7回日本ブラジル経済合同委員会に向けた第1回代表団打合せ会を開催し、外務省の田中中南米局長より最近のブラジルの政治・経済情勢と日伯関係について説明を聞いた。田中局長は、ブラジル経済はアジア危機の影響を最小限に抑え回復に向かっており、また経済改革をさらに進める上で必要な憲法改正にも進捗が見られると述べた。

  1. アジア通貨危機への適切な対応
  2. ブラジルは、アルゼンチン、メキシコなどに比べて、アジア通貨危機の影響が最も大きかったが、急落した株価も回復に向かうなど、ソフトランディングに成功している。その最大の理由は、ブラジル政府が、金利の年率20%から43%への引上げ、および200億レアルの歳出削減をもたらす財政調整パッケージなどの、適切かつ迅速な措置をとったことにある。その他、カルドーゾ大統領とレアル・プランに対する国民の信頼、ブラジル政府の措置に対するIMFの迅速な支援、バブルの不在、金融部門のリストラの進捗などの要因も、アジア危機の影響を最小限に抑える上で重要であった。
    97年はインフレ率は4.3%にまで下がったが、年後半のデフレ的政策の影響で国内消費は冷え込んだ。しかし本年3月5日に金利が28%にまで引き下げられたことにより、今後、景気は緩やかな回復に向かうと見られる。レアルの過大評価が指摘されているが、少なくとも10月の大統領選挙以前にレアル・プランが変更されることはないと思われる。

  3. 憲法改正に進捗
  4. 95年11月に、外資差別の廃止、石油開発、電気通信分野の民間への開放などを可能にする憲法改正案が成立した。また97年6月には大統領等の再選を可能とする法案が成立し、98年10月の大統領選挙へのカルドーゾ大統領の再立候補が可能となった。現状では、カルドーゾ大統領が当選する可能性が大きい。
    アジア通貨危機を契機として国会議員に危機感が生まれたことにより、2年半にわたり難航していた社会保障制度改革と行政改革に関する憲法改正案をめぐる審議にも進捗が見られ、後者は3月11日に両院での手続をすべて終了し、前者も4月以降に成立する見込みである。

  5. 良好な日伯関係
  6. 日伯関係は基本的にきわめて良好である。ブラジル側は日本からの投資の拡大に期待しているが、97年頃から日本企業のブラジルに対する評価も少しずつよくなりつつある。
    メルコスールに対しては、従来、WTOとの整合性の観点からのみ対処してきたが、欧米のように経済協定の締結を推進するなど、法的枠組みによる対応が必要ではないか再考の必要がある。また交通網等メルコスールをにらんだ多国間プロジェクトへの経済協力を考えており、民間からの提案を期待している。


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