経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

通商産業省工業技術院の国立試験研究機関見学会/1月20日、3月2日

つくばにある通商産業省工業技術院の8研究所を見学


産業技術委員会では、今般の中央省庁再編という大きな流れの中で、科学技術関係の省庁再編や国立試験研究機関の統廃合・エージェンシー化、総合科学技術会議の充実を強く要望してきた。そうした中、通産省の要請に基づき、産業技術委員会で国研に関心のあるメンバーが、筑波にある8つの研究所を訪問した。懇談の席上、国研側から、「国研の研究部長と企業の研究所長との懇談の場は従来からあるが、今後は研究マネジメントに携わっている方にも現場を見ていただきたい」「国研の外部評価に企業から積極的に参加いただきたい」旨の発言があった。以下は見学の概要である。

研究所(見学順)説明を聞いた研究テーマおよび見学した施設等
産業技術融合領域研究所
総人員56名(うち研究職45名)
  1. 半導体材料等への応用を目指した原子分子操作技術(アトムテクノロジー)の研究例として「ビーム技術による電子制御」、「新規電子物性材料の開発」の研究状況。
  2. 生体の構造や運動機能を明らかにし、骨・筋肉・血管等の生体機能を代替する組織や分子機械の研究(バイオニックデザイン)の例として「骨再構築過程の解明」の研究状況。
物質工学工業技術研究所
407名(342名)
  1. 材料の構造およびプロセスを精密に制御し、材料の高性能化・新機能の発現等を目指した「精密制御高分子材料」の研究状況。
  2. 超臨界流体を用いた新しい反応プロセスである「超臨界流体利用技術」の研究状況。
  3. オゾン層を破壊せず温暖化効果の小さい「第三世代フロン」の研究状況。
計量研究所
195名(122名)
  1. 光学トンネル内で、レーザーを用いた高精度の距離測定技術等(「長さ標準」の研究)を見学。
  2. 世界最大の力標準機等(「力標準」の研究)を見学。
  3. シリコン結晶を用いて、従来よりはるかに高精度の標準物質を確立するのための研究状況。
電子技術総合研究所
626名(524名)
  1. 超薄型・高輝度・高精細・低消費電力が期待される「LSI技術による次世代フラットパネルディスプレイ」の研究状況。
  2. 「脳内の情報処理」の解明のための研究状況。
  3. コンピュータ上の仮想人物との対話が可能な「マルチモーダル対話システム」の実演。
資源環境技術総合研究所
285名(232名)
  1. 工業製品の製造・使用・廃棄における環境への影響を計量的に評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の研究状況。
  2. 光触媒法に基づく大気浄化材料である「NOx浄化光触媒」の研究状況等。
  3. 「メタンハイドレード(メタンガスと水から構成される氷状の固体物質)」の燃焼実験を見学。
地質調査所
326名(234名)
  1. 防災情報、資源情報等の提供状況、放射性廃棄物の地層処分の研究状況等(「地質図・活断層・資源情報等の地球科学情報の社会への提供」)。
  2. 地熱に関する研究例として「地熱資源探査技術の開発」の現状等。
  3. 岩石・鉱物・化石等の標本資料が管理されている「地質標本館」(標本数110,193点:1997年現在)を見学。
生命工学工業技術研究所
228名(194名)
  1. 生理活性ペプチドの開発例として、血圧降下の効果があるペプチドの開発および商品化までの過程。
  2. 「人体の形状に適合した製品のデザイン」に関する研究状況。
  3. の特許微生物の寄託機関である「特許微生物寄託センター」において、寄託された微生物、動物細胞、植物細胞等の保存施設を見学。
機械技術研究所
244名(199名)
  1. 微細な機構部品の製作技術である「超精密3次元微細切削加工」の研究状況。
  2. 人が箸を用いる方法を模倣した2本指のマイクロハンドの実演(「マイクロマニュピュレータ」の研究)。
  3. 「マイクロ旋盤」を例とした生産機械システムのダウンサイジングのための研究状況および同施盤による切削の実演。

通商産業省工業技術院のホームページ
(各研究所のホームページへのリンクが登録されています)


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