経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

産業における気象情報の利用促進に関する懇談会(座長 鈴木副会長)/2月27日

産業活動における気象情報の一層の活用に向けて


気象の変動は広く産業活動全般に大きな影響を及ぼすものであることから、気象情報が産業界の実際のニーズに即して、より迅速、正確、かつ利用し易い形で提供されることが重要である。そこで、今般、産業活動における気象情報の利用促進に向けての取組みについて気象庁と民間気象事業者から説明を聞くとともに懇談する機会を設けた。

  1. 龍野気象庁次長あいさつ
  2. 企業は気象情報を活用することによって、気象の変化が企業活動に与えるデメリットを極小化し、メリットを極大化することができ、気象情報の潜在的な経済的価値は大きい。しかし、企業はまだ気象情報を十分に使いこなしているとは言えず、気象庁としても、気象情報の精度を向上させるための観測・解析・予報能力を高め、産業界の期待に応えたい。

  3. 伊藤気象庁産業気象課長説明
  4. 気象庁は、気象専用回線を通じて日本・世界各地から集められた観測データを基に、スーパーコンピュータを用いて予測した結果を防災、生活、環境、産業、交通安全等の目的に応じて、利用しやすい気象情報の形に翻訳・加工し、広く一般に提供している。
    気象情報に対するニーズは、ますます多様化・高度化しており、近年は、気象庁から提供されたデータに基づいて、さまざまな付加価値サービスを提供する民間気象事業者も、その対応に一役買っている。
    気象情報の経済的効用をさらに高めるためには
    1. 気象情報の内容と精度高度化、
    2. 新しいメディアを通じた気象情報の活用、
    3. 民間気象事業の推進、
    4. 産業分野における気象情報の利用法の開発・普及、
    等が必要である。

  5. 石橋ウェザーニューズ社長説明
  6. われわれ民間気象事業者は、気象庁から提供されるデータを加工する「名コック」を目指している。気象庁が「みんなの気象台」であるとすれば、われわれは「あなたの気象台」として、個別のニーズにきめ細やかに対応するサービスを提供するのである。
    気象予測をデータとして単に顧客に伝えるのではなく、むしろその気象予測を基にどのように対応すべきかという対応策を提示するのが重要な任務であり、それを、われわれはリスク・コミュニケーション(RC)サービスと呼んでいる。産業の現場での具体的なニーズを踏まえ、気象と個々の経済事象の相関を捉え、真のウェザー・マーケティングを心がけている。

  7. 意見交換
  8. 経団連側:
    RCサービスが進んだことによってメリットがあった具体的な事例は何か。
    石橋社長:
    危険とされてきた冬期のアリューシャン列島沿いの日米間航路が、RCサービスが進んだことにより、大幅に利用されるようになった。東京−サンフランシスコ間の最良・最短の航路選択も可能となり、航海に要する日数を減らすことができた。


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