経団連くりっぷ No.75 (1998年3月26日)

21世紀政策研究所(理事長 田中直毅氏)/3月5日

日本と東アジアの金融不安解消のため
ニューヨークにてセミナーを開催


21世紀政策研究所では、米国の金融関係者等に対して、わが国の金融システム安定化策と東アジアの経済回復への貢献策について説明をし、理解を得る必要があるとの考えから、ニューヨークにおいて、「日本の金融システム安定化と東アジアでの経済秩序の再構築」と題するセミナーを開催した(日本協会と共催)。当日は、宮澤喜一元首相と田中理事長らが約300人の参加者を前に説明し、質疑に答えた。

  1. わが国経済変動と金融システム安定化
    1. 豊田会長は、冒頭の挨拶の中で、「東アジアの経済危機、世界経済の安定成長に対するわが国の責務を果たすには、経済の安定成長が必要」と述べた。
      また宮澤元首相が、わが国の経済変動について基調講演を行ない、
      1. 従来の護送船団方式による銀行行政を放棄し、ルールに基づく透明性の高いものへ移行する、
      2. 3月以降も経済回復が遅いあるいは停滞している場合には、財政金融措置をさらに講じなければならなくなるかもしれない、
      3. 3月以降、銀行の持っている貸付債権や不動産等の証券化を推進すべきである、
      などと述べた。
      これに対しグリーンバーグAIG会長は、「東アジア危機打開に果たす日本の責任は大きく、東アジア製品の輸入増加が必要だ。日本が世界の経済成長のエンジンになるには景気回復が不可欠であり、減税が行なわれるべきである」などとコメントした。
      また宮澤元首相は、会場からの質問に答え、「現状は景気回復が財政再建に優先されるべきで、特に直接税(所得税と法人税)の引下げが重要である」などと述べた。

    2. 引き続き21世紀政策研究所の鹿野研究主幹が説明を行ない、「早期是正措置の導入は、従来の裁量的な銀行監督政策の放棄と透明性の高い銀行行政への移行、市場との対話を意識した銀行経営への転換を促す」と述べた。これに対しハイマンGFI会長は、「日本は企業財務の透明性を高め、国際会計基準を導入すべきだ。また金融危機管理審査委員会は、信頼性を確保するため、審査基準・審査結果を内外に公表すべきだ」などとコメントした。

  2. 東アジアの経済調整の収束に向けたわが国の役割
  3. 田中理事長は、「わが国の経済政策は東アジアの経済発展に対しどのような役割を果たすのかとの視点から見直される必要がある」とし、わが国の市場開放・内需拡大の必要性などについて説明した。これに対しクバリッチ氏(カウフマン&クバリッチ・アドバイザーズ経営部門担当および投資部門最高責任者)は、「東アジアの経済回復には日本経済の安定が必要だ」とし、「経済刺激策は遅くとも4月までに実施し、特に不動産の流動化が重要だ。規制緩和は新たな雇用を創出する」などとコメントした。


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