経団連くりっぷ No.76 (1998年4月9日)

なびげーたー

物流の効率化に向けた課題─わが国港湾のあり方

産業本部長 永松恵一


港湾は物流の結節点として重要な役割を担っている。今後、その重要性を再認識し、わが国港湾のあり方を見直していく必要がある。

本格的な大競争時代の到来に伴い、わが国経済の高コスト構造を是正する観点から、物流の効率化が最重要課題のひとつとなっている。とりわけ港湾は国際物流と国内物流の結節点であるとともに、各輸送モードの結節点としての役割を果たしており、物流効率化の観点から重要な検討課題である。そこで、先般、調査ミッションを派遣した香港、シンガポール、高雄(台湾)の3港を参考にしながら、わが国港湾の課題をいくつかあげてみたい。

  1. 投資の重点化
  2. わが国には、133もの港湾が重要港湾に指定されているが(うち21港が特定重要港湾)、これらすべての港湾が大水深バースを備えたハブポートである必要はない。大型の母船の寄港を前提とした港湾を絞り込み、そこに重点的に投資すべきである。台湾においては、基隆港、台中港もある中で、高雄港に重点投資している。

  3. 利用者のニーズの尊重
  4. 港湾の整備において重要なのは、船社等内外の利用者のニーズである。前述の3港に共通していえることは、自国の港湾もしくは自社のターミナルを使用してもらうための競争が存在するということである。ユーザーの意見・要望を重視し、それに着実に対応していく、港湾サービス最優先の姿勢が求められよう。

  5. 365日・24時間体制
  6. 日本では、日曜日、祝祭日は休みとなるため、入港スケジュールの調整、コストアップが問題となっているが、世界のハブポートにおいては、365日・24時間フル稼動が常識となっている。もちろん、そのためのコストアップ要因は考慮する必要があるが、利便性向上による集荷量の増加、その結果としての高能率化も期待できる。少なくとも、前述の重点化の対象となる港湾については、年間フルオープン体制の実現を真剣に検討すべきであろう。

  7. 情報化の推進による利便性の向上
  8. シンガポール港においては、入出港手続や輸出入手続等は完全にペーパレス化されている。また、これらのシステムが相互に接続され、一度の入力で同時に処理できるようになっている。わが国においても、入出港手続をEDI化し、輸出入手続等の諸手続のシステムと接続することにより、ペーパレス化、処理の迅速化を図る必要がある。本年3月に閣議決定された規制緩和推進3カ年計画においては、平成11年度実施予定となっているが、検討、実施に際しては船社等ユーザーの意見を十分に取り込むとともに、思い切って前倒しを図る必要があろう。


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