経団連くりっぷ No.76 (1998年4月9日)

自見郵政大臣との懇談会(司会 内田事務総長)/3月30日

今後の郵政行政について自見郵政大臣と懇談


経団連では、今後の日本経済活性化の先導的役割が期待される情報通信分野に関する環境整備をはじめ、郵政行政のあり方について、自見庄三郎郵政大臣、中谷元郵政政務次官をはじめとする郵政省幹部と懇談した。

  1. 自見郵政大臣説明要旨
    1. 追加景気対策について
    2. 3月26日に与党三党が決定した事業総額16兆円超の総合経済対策の基本方針に沿い、郵政省としても景気回復へ向けて積極的に取り組んでいく。その一環として、情報通信の高度化に向けて、景気回復を牽引する夢のある施策を展開していく。また、郵便貯金・簡易保険の機動的かつ弾力的な資金運用を図る。これは、株価対策が目的ではなく、あくまでも有利な運用を通じた預金者・加入者の利益向上が目的である。

    3. 期待される情報通信産業
    4. 情報通信は、景気回復の牽引車であり、雇用を創出し、経済社会構造の変革を促す。
      通信・放送産業の設備投資は96年度が4.9兆円で、全産業の11%を占め、電力を抜いて一位となった。市場規模も97年10-12月期には、産業全体が前年同期比4.4%減となる中で、通信・放送産業は前年同期比15.3%増と大幅に増加した。規制緩和が果たした役割も大きく、携帯電話はその好例である。端末買い取り制の導入、通信料金の届出制への変更等規制の緩和により、
      1. 加入者数の増加(97年度には前年比約1,000万加入増の約3,600万加入へ)、
      2. 市場の拡大(5年前の5,000億円から4兆円へ)、
      3. 設備投資の拡大(96年度1.6兆円)、
      4. 雇用の創出(約2万人)、
      5. 通話料の低廉化(約6割安)、
      がもたらされた。

    5. 今後の政策展開
      1. 研究開発への積極的な取組み
        情報通信分野が重要であるとの認識の下、例えば、高度20kmの飛行船を無線中継局として活用する、成層圏無線プラットフォームを計画している。2002年の実用化を目指して、科学技術庁と共同研究を推進する。

      2. 光ファイバ網の整備促進
        光ファイバ網による大容量ネットワークの全国整備を早期に実現するべく、2010年から2005年への前倒しの努力をする。全国整備には、通信事業者の局舎からき線点までの整備に約25兆円、き線点から加入者宅までの整備に約8兆円、総額約33兆円の投資が必要という試算があり、後者については、加入者が負担する方向で考えて欲しい。

      3. 携帯電話網のエリア拡充
        全市町村のカバー率を9割まで高めたい。

      4. 地上波放送のデジタル化の推進
        通信、CATV、衛星放送でデジタル化が進む中、地上波放送のデジタル化のための法整備についても2000年に向けて検討したい。ただし、NHKで約3,000億円、民放で約7,000億円もの設備投資が必要であることと、約2兆円市場とも言われる受信機の普及が課題であり、税制・金融面での優遇措置が必要と考える。

      5. 教育分野でのインターネット活用促進
        文部省とともに「教育分野におけるインターネット活用促進に関する懇談会」を設置し、小中高等学校でのインターネット活用の考え方や利用環境の整備のあり方について検討を開始した。今般の総合経済対策の中で具体化を図りたい。

      6. 規制緩和の促進
        接続ルールの適切な運用の確保に向け、接続料金算定の根拠となっている総括原価方式の取扱いについて、99年度末を目途に結論を出すべく検討している。NTT再編の法的整備は済み、後は実施あるのみである。競争の促進を期待している。本年2月、WTOの基本的な電気通信合意により、国際公専公接続が解禁された。

      7. 電子商取引の積極的取組み
        電子商取引には関税やプライバシー保護等の課題が多く、しっかり取組みたい。30億円の予算を投じ、NTTや金融機関の協力を得て電子マネーの研究開発を進めており、本年9月からは実証実験を行なう。

      8. 郵政事業の効率化等
        先般導入した郵便番号の7桁化により、今後10年間で、約2,000億円のコスト削減に向けて約8,000人の労働力削減に取り組む。郵便局ネットワークを活用したワンストップ行政サービスについては、2005年の実用化を目指す。郵便貯金は、すでに入口、出口ともに市場金利に連動していると考えている。郵便事業への民間参入については、その条件を検討中である。

  2. 意見交換
  3. 関本評議員会副議長:
    総額16兆円超の総合経済対策の中身を詰めるにあたっては、産業界の意見を反映願いたい。
    自見大臣:
    今回の景気対策は、与党も前向きに検討することになっており、郵政省としても努力する。

    藤井情報通信委員会委員長:
    電子商取引、情報リテラシー、コンテント、GISについて、規制緩和等の面で、高度情報通信社会推進本部の副本部長として、リーダーシップを発揮願いたい。
    自見大臣:
    コンテントは、米国に比べ遅れているが、市場・雇用の両面で大事であると認識しており、今後力を入れていきたい。

    大賀評議員会副議長:
    将来のインフラであるFTTH(ファイバ・トゥ・ザ・ホーム)のようなものをどんな形で整備するか、国策として検討願いたい。
    自見大臣:
    FTTHは重要であるという認識にたって取り組んでいく。

    橋本評議員会副議長:
    官は民の補完に徹するという基本原則に立ち戻り、将来的に郵政三事業は民営化するという弾力性を確保すべきである。
    自見大臣:
    官は民の補完であるという考え方には同感である。小切手社会の米国では、口座を開設できない人が増加し社会問題になっている。社会的側面からライフライン的役割をもつ公的金融機関が必要である。

    櫻井経済政策委員会委員長:
    情報化の進展によって、雇用が創出されることをもっとPRすべきである。
    自見大臣:
    郵政省が現在実験を行なっているテレワークの普及は、育児、教育、環境等へインパクトを与えるとともに、女性の労働力の活用等にも資する。


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