経団連くりっぷ No.76 (1998年4月9日)

第9回在外委員会議(於 バンコク)/3月1日〜2日

経済危機と国際文化交流


経団連では、毎年1回、国際文化交流プロジェクトを実施しているアセアン5カ国(タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン)の日本人商工会議所の文化交流担当役員らを招いて在外委員会議を開催している。本年は、国際協力委員会国際文化交流部会(部会長:高橋 大日本印刷専務取締役)において、各プロジェクトの実施期限終了への対応および経団連が本来果たすべき役割などについて検討中であることから、同部会メンバーの参加も得て、3月1日、2日の両日、バンコクにおいて開催した。なお、日本から参加したメンバーは、翌3日にはタイ東北部の「経団連スカラシップ」対象校2校を訪問し、4日にはクアラルンプールにおいてマレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)日本研究センターの第7回アドバイザリー・グループ会議に出席した。


日枝国際協力委員長代行

  1. 第9回在外委員会議
  2. 今回の会議には、アセアン各地の日本人商工会議所の文化交流担当役員・事務局長9名(インドネシアは今回、都合により欠席)と、日枝国際協力委員長代行、高橋国際文化交流部会長以下同部会メンバー9名、経団連事務局3名の計22名が出席した。まず、日枝委員長代行が開会挨拶を行ない、続いて高橋部会長が同部会の活動状況を報告した後、(1)各日本人商工会議所が現地で行なっている文化交流活動の現状と課題、および(2)経団連が実施している各プロジェクトの現地における評価と今後の見通しについて、それぞれ報告と検討を行なった。
    (1)については、タイ、マレーシア、シンガポールの各日本人商工会議所から、独自の基金を設立して現地との文化交流活動を推進しているとの報告があった。また、各会議所とも、現地日本人会等との共催で日本語スピーチコンテストを実施するなどしているとのことであった。
    他方、昨今の通貨・金融危機で文化交流活動も量から質への転換を迫られており、限られた予算をどう効果的に活用するかが課題であるとの報告もあった。具体的には、マレーシアのLook East政策に対する民間としての支援策が話題となった。
    また、(2)については、在外委員からは、経団連が実施している各プロジェクトは地元から非常に高い評価を得ており、見直し・改善を行なったうえでぜひ継続してほしいとの意見が多く寄せられた。この他、経団連が国際文化交流において果たすべき役割についても意見交換を行なった。ここでは、現行の国際文化交流プロジェクトは奨学金支給等、教育支援を目的としたものが多いが、文化交流の基本理念は「人と人との出会い」であり、必ずしも教育分野に限る必要はないが、効果という点では教育分野での活動は波及効果も含めて大きい、等の意見があった。

  3. タイ東北部学校視察
  4. 経団連は、1990年からタイ東北部中高生奨学金(「経団連スカラシップ」)事業を開始し、タイ東北部の貧しい中学生・高校生5,400名に対し、年額2,000バーツ(中学生)、2,500バーツ(高校生)の奨学金を支給している。タイ東北部は、1家族あたりの年収が約7万円と貧しく、中等教育を受けられるかどうかがこの奨学金にかかっているという生徒も多い。実際、ある奨学生の家を訪ねてみると、この地方に多い高床式の家ではあったが、ようやく雨露がしのげる程度の貧しい造りで、中には家財道具らしきものがほとんど見あたらなかった。訪問した学校では、各奨学生から「一生懸命勉強し、タイの国造りの役に立ちたい。」等の挨拶があった。
    なお、日枝委員長代行と高橋部会長は、在外委員会議終了後の3月2日午後、タイ教育省を表敬訪問し、スラート事務次官と会談した。スラート次官は、自らも東北部の出身であり、貧しい中で教育を受けた経験があると述べたうえで、経団連スカラシップは、金額はさほど大きくないが、子供たちを救い、彼らに大きなチャンスを与える素晴らしい事業であると述べ、本事業を高く評価した。


    経団連スカラシップ奨学生と
    (上段中央が高橋国際文化交流部会長)

  5. ISIS日本研究センター第7回アドバイザリー・グループ会議
  6. ノルディン・ソピーISIS会長 会議には、日本・マレーシア双方6名ずつのアドバイザリー・グループメンバーと、オブザーバーが出席した。ノルディン・ソピーISIS会長の開会挨拶、日枝委員長代行の挨拶に続き、ISIS側から97年度の活動報告・決算と98年度の活動計画・予算に関する説明があり、その後、意見交換を行なった。経団連側からは、センターの活動・運営について、同センター支援事業の参加企業から寄せられた意見・要望を発表した。他方、ISIS側からは、98年に同センター支援事業の期間が終了することから、支援継続の要請があった。



くりっぷ No.76 目次日本語のホームページ