農政部会(部会長 山崎誠三氏)/3月17日
計画流通米持越在庫量は、昨年10月末で391万トンにのぼり、食糧法施行後2年間で、適正在庫水準に比べて約200万トンの余剰が生じた。今回の米過剰は、1970年、80年に次ぐ、第三次米過剰と言われている。
米過剰となった要因は、4年連続の豊作という天候の要因もあったが、その影響はせいぜい半分程度で、残りは食糧法の内部的・構造的な欠陥要因によるものである。具体的には、(1)当初予定していた農協主体の需給調整メカニズムが機能しなかったこと(過剰分は農協が調整保管し、その分に相当する面積を翌年の生産調整面積に上乗せすることになっていたにもかかわらず、昨年度の生産調整面積は据え置かれた)、(2)流通規制が緩やかで価格の安い計画外流通米に需要がシフトし、計画流通米の売れ行きが振るわなかったことなどである。
第三次米過剰は、前2回の米過剰とは次の2点で異なっている。第1に、厳しい財政制約の下で、過剰米を主食用として処理する方針であること、第2に、旧食管法の下のような政府米価が存在しないことから、米価が大幅に下落し(8年産米と9年産米を比較して約13%下落)、農家に「米価ショック」を与えたことである。特に大規模農家が米価ショックの打撃を受けた。
第三次米過剰ならびに米価ショックを受けて、食糧法は発足後2年で再編成せざるをえなくなり、農林水産省は昨年11月、「新たな米政策」を打ち出した。
「新たな米政策」は、米の需給調整や価格の調整を農協を中心に全国規模で行なおうとするもので、主に以下の3つの政策からなっている。つまり、
マスコミは、新たな米政策について、一種のデカップリング(価格政策と所得政策の分離)であるとして概ね評価している。当初反対が強かった農家も、米価ショック後は、やむをえないという雰囲気に変わってきている。しかし、生産調整強化に対する不信感は強く、今後、生産調整の拡大に協力しない農家が大規模農家を中心に出てくることが予想される。
今回の米対策は、全般的な米政策に係る改革の第一歩であり、引き続き改革を図っていく必要がある。過剰米処理や統一的な価格形成の問題、備蓄と調整保管との位置づけの見直し、計画流通制度の見直しなど、今後、解決すべき課題は山積している。
特に過剰米処理問題は深刻である。政府は今後2年間で政府備蓄を400万トンから200万トンに減らすとしているが、政府の計画は現実味が薄い。古米を1年間で約100万トン販売するというが、可能とは考え難い。
また生産調整が強化されることもあり、来年度は新米が極端に不足し、古米は過剰になると見込まれる。その場合、新米と古米の価格差が急速に拡大するが、全体の米の流れにどう影響するのか、懸念される。