経団連くりっぷ No.76 (1998年4月9日)

韓国金融研究院 朴 英哲院長との懇談会

韓国金融危機と日本の役割


経団連、経済広報センターでは、CBCC(海外事業活動関連協議会)、日韓経済協会との共催により、韓国金融研究院朴英哲院長を招き、「韓国経済の現下の状況と展望」と題する講演会を開催するとともに意見交換を行なった。

  1. 朴院長講演概要
  2. 昨年9月に始まった金融危機により、韓国経済は現在、年率約3%のGDP縮小に直面しており、これは朝鮮戦争休戦後最大の落ち込みである。9月以降のウォンの対ドル下げ幅は50%を超え、インフレ率も10%に達した。失業率は今年末には昨年末の3倍以上の、7%に達する可能性がある。
    韓国政府は現下の危機に対して、主として3つの構造改革を打ち出している。第1に、GDPの50%をも占める財閥に対して、特定業種への特化を強制し、グループ企業内の相互債務保証・株式持ち合いを縮小させ、将来的には解消させると同時に、財閥オーナーが経営責任を持つメカニズムを形成する。第2には、金融システムの改革として、政府が基金を設立して不良債権を買い取り、韓国金融機関同士、あるいは外資によるM&Aを積極的に奨励し、金融市場の完全な対外開放を行なう。そして第3に、労働市場の弾力性を高めるために、レイオフを法的に可能にする一方、さらに1年から1年半後には、失業率を危機発生前の水準に引き下げることを目指す。労働界を含めて全国民で痛みを分かち合い、韓国はこの危機を克服する。
    新たな金融危機を回避するためにも、今回の教訓を生かさなければならない。今回の金融危機では、民間金融機関が公的な債務保証を暗に期待するモラル・ハザードと、一旦危険性が指摘されると一斉に資金を引き揚げる群集行動が明らかになった。これらを防ぐためには、多国籍の巨大な金融機関に対する監視・調整機能を持つ、国際的な中央銀行組織が必要であると考える。
    また、日本の役割も重要である。アジア諸国において、日本は最大の投資国であり、今回の金融支援においても先進国中で最大の額を支援しているのだから、相当のリーダーシップを取ってほしい。そして同時に、アジア諸国にマイナスの影響を及ぼさないためにも、国内の金融問題を早急に解決していただきたい。

  3. 意見交換
  4. 参加者から、どの改革から着手するのか、改革推進の中心となる勢力はどこか、日本産業界として協力できる事は何か等の質問が出された。朴博士より、市場開放により一気に改革を進める、優秀な技術を持つ日本の中小企業に直接投資してほしい、そのために韓国進出により利益の得られる投資環境の育成が急務であるとの説明があった。


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