経団連くりっぷ No.77 (1998年4月23日)

ムベキ南ア副大統領との懇談会(座長 笠原中東アフリカ地域委員長)/4月8日

アフリカン・ルネッサンスの推進に向けて


南アフリカでは、94年にマンデラ政権が誕生して以来、ムベキ副大統領が内政・外交の舵取りに中心的な役割を担ってきており、99年春の大統領選挙では、ムベキ副大統領が次期南ア大統領に選出されるものとみられている。このような状況の下、日中韓との政治・経済交流を活発化させるため、副大統領就任後初めてアジアを歴訪したムベキ副大統領を招き、今井、熊谷両副会長の出席を得て懇談会を開催した。以下は、同副大統領の発言要旨である。

ムベキ副大統領

日本は大国であり、政治的にも大きな役割を果たすことが求められており、国連の常任理事国入りを支持する。したがって日本は、アフリカを中心とする世界各国との政治対話を、従前にも増して活発化させることが必要である。アフリカ開発については、南ア政府に対しても大きな役割が求められていると認識しており、そのためにも、日本と安定かつ継続的な政治対話を行ない、よいパートナーとなりたいと願っている。

経済的には、日本との関係が、これまでの鉱物資源を中心とした貿易関係から、投資を含めた幅広い関係に拡大してきたことに満足している。今後もこの傾向が持続することを切に期待する。日本企業は、植民地支配という歴史的なしがらみがなく、南アに対して投資しやすい立場にある。南アは日本企業のダイナミズムと物づくりに関する新しい手法を歓迎する。

投資環境に問題があれば、遅滞なく改善していきたい。たしかに治安は問題だが、基本的な原因は貧困であり、経済状況の改善に伴い、問題は徐々に解決されつつある。為替管理も徐々に撤廃するつもりである。日本企業の投資を促進するため、日本政府に投資保険の拡充を要望してきたが、今回の訪日を通じて良好な回答を得た。

南アの成功を維持するためには、内部の政争に明け暮れている暇はなく、一致団結して努力していく必要がある。現在最も必要とされていることは、雇用の創出である。経済の近代化、インフラ構築、研究開発、人材育成等の重要課題も、すべて雇用拡大を念頭において行なわれる。日本の企業は、これら分野で十分な経験を有しており、この点からも進出を歓迎したい。

一国繁栄主義では、南アは成功しない。アフリカ大陸には貧しい国々が多くあり、これらの国々の成功抜きに、南アの成功もあり得ない。これらの国々に率直に問題を伝え、暴力と差別を排除し政治・経済に民主主義・市場経済を導入しない限り、長期的な成功を達成できないことを理解させねばならない。いわゆるアフリカン・ルネッサンスの推進である。日本もこの点を理解し、協力してもらえれば幸いである。


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