経団連くりっぷ No.77 (1998年4月23日)

産業技術委員会(委員長 金井 務氏)/4月6日

知的財産権による知的創造サイクルの確立を目指す


昨年まとめられた「21世紀の知的財産権を考える懇談会」報告書での提言に基づき、特許法、意匠法等の改正法案が国会で審議されている。そこで、産業技術委員会では、特許庁の荒井長官を招き、今後の特許行政のあり方等について説明を聞くとともに懇談した。また併せて、当委員会政策部会(部会長:武田康嗣日立製作所専務取締役)が実施予定の「日本の産業技術力強化のための実態調査」について、委員企業等の積極的な協力を求めた。

  1. 荒井特許庁長官説明概要
    1. 知的創造サイクルの確立
    2. 科学技術を発展させ、その成果を蓄積し、有効活用することが重大な課題となっている。創造された技術を「財」として明確に位置づけることによって知的財産の「創造、権利設定、権利活用」という知的創造サイクルを築き上げる必要がある。
      技術貿易に関して日米比較をすると、87〜96年の10年間に米国が17.5兆円の黒字を上げている一方、日本は約4兆円の赤字である。研究開発投資を十分に回収するためには、日本企業も世界的戦略をもって知的財産権を活用していく必要がある。特許庁としても、プロ・パテント(特許権保護)政策をさらに強力に推進していく。

    3. 21世紀の知的財産権の目指す方向
    4. 昨年、特許庁長官の私的懇談会である「21世紀の知的財産権を考える懇談会」の報告書において、今後の知的財産行政の方向として提言された8項目について、以下のような取組みを推進している。

      1. 知的財産権の広い保護:
        新領域における保護スキームの構築
      2. 知的財産権の強い保護:
        損害賠償額の引き上げ、紛争処理機能の充実
      3. 大学・研究所の知的財産権振興:
        産業技術移転促進法案を今通常国会に提出
      4. 特許市場の創設:
        特許流通アドバイザー拡充、特許流通データベースの整備
      5. 電子パテントの実現:
        出願人と特許庁間の双方向オンラインでの事務処理高度化
      6. 発展途上国に対する協力の推進:
        人材育成・情報化・審査協力の拡大
      7. 世界共通特許:
        日米欧三極の特許庁間の協力の推進(審査情報交換、共同審査等)
      8. 知的財産権政策の国家的取組み:
        知的財産権の普及・啓発事業の実施

    5. 特許庁親切運動の展開
    6. 昨年末から特許庁のサービスを拡充するために、出願手続、審査、審判、特許庁からの通知や情報提供、ユーザーからの相談等について23項目の活動を実施している。

  2. 武田政策部会長から日本の産業技術力強化のための実態調査への協力依頼
  3. 日本の産業技術力強化のために、経営層の技術力等に関する現状認識や企業努力の方向性、必要としている人材等について、実態把握のための事業分野別調査を当委員会委員企業等に対して実施することとした。積極的な協力をお願いしたい。


くりっぷ No.77 目次日本語のホームページ