経団連くりっぷ No.77 (1998年4月23日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田事務総長)/4月2日

新入会員代表者との懇談会を開催


経団連では年2回程度、新規に入会した会員の代表者より、各企業・業界の当面する課題や要望を伺い、活動に反映させている。当日は新入会員代表者12名および豊田会長、内田事務総長ほか役員が出席し、率直な意見交換を行なった。

  1. 豊田会長挨拶
  2. 経団連では追加的な景気対策を強く要望してきたが、政府・与党においては16兆円を上回る過去最大規模の経済対策が打ち出され、良い方向に向いつつある。しかし、本格的な景気回復を実現するためには、将来に対する国民の不安感を払拭することが何よりも重要と考えている。「官から民へ」という大きな流れの中で、経団連の果たすべき役割は重要性を増してきている。今後は、経団連活動に積極的に参加いただき、新しい息吹を吹き込んでほしい。

  3. 新入会員代表者発言
    1. わかもと製薬 牧田社長
    2. 薬価基準が3年間続けて引き下げられ、厳しい状況が続いている。しかし、人間の生命の尊厳を第一に考え、事業に取り組んでいる。ビックバンや経済改革の影響を緩和させるためにも、諸政策がパラレルに実行される必要がある。

    3. プラウドフットジャパン 長谷川社長
    4. 経団連に対しては、変革を積極的にリードする組織であってもらいたいと思っている。経験上、意識改革をせよと言っても改革は起こらない。小さな行動の実行から始め、体感的に次々と行動を起こしていくことが、改革の実行に結びつく。

    5. アラコ 関谷会長
    6. インドネシアなどアジア諸国への支援は、時限的に、先方が必要なものを輸入しやすくする方法を考えるべきだ。日本人は世界一の賃金をもらっているが、生活の豊かさを実感できていない。住宅や教育費をいかに安くできるかが重要なポイントだ。環境問題では、日本の高度な技術で、今から途上国を支援し、世界全体の環境対策に貢献していくことが大切だ。

    7. ロイヤル 榎本会長
    8. 飲食業は消費者と身近に接しているので、消費者マインドの動向に一番敏感だ。消費税のUP、医療費の負担増、特別減税の打ち切りなどがあり、景気停滞の最大の問題は消費者マインドの冷え込みにある。その対策をタイムリーに実施する必要がある。

    9. 愛三工業 伊東社長
    10. 自動車部品業界では昨年秋から景況感が特に悪化し、バブル崩壊時よりも苦しいと感じている。当時は生産がマイナスにはならなかったが、本年に入ってからは、先の見通しが立たない。景気対策は国民にわかりやすいものが良く、所得税減税が一番効果があるのではないか。

    11. ジェーシービー 池内社長
    12. 経団連の規制緩和要望に銀行系クレジットカード会社の業務範囲拡大が盛り込まれ、将来への希望が増している。問題は、カードの不正使用・偽造で、近年着実に被害額が増加傾向にあり、減少する兆候が無い。個人消費が停滞しており、カードの利用も、昨年12月以降伸び悩んでいる。

    13. チェースマンハッタン銀行 山田グループ上席顧問
    14. 効率の良い市場をつくることはOECD加盟各国共通の課題である。日本経済は現在不振だが、米国も10年ほど前までは、苦しい時代を経験した。その時は日本に助けてもらったので、“A friend in need is a friend indeed”で、今度はわれわれが役に立ちたいと考えている。米国企業としての特色を持ちながら、日本社会の一員として活動していきたい。

    15. 日本コーリン 篠田社長
    16. 医療は本物でなければならず、医療先進国の米国で売れ続けるものを作ろうと事業を始めた。現在は米国でも生産しており、為替リスクや薬価問題等もなく、グローバル化の恩恵を受けている。医療費の低下は、途上国の人々が近代的な医療を受けられるチャンスが増すことになり、世界平和への貢献につながる。

    17. 日新 筒井社長
    18. 国内をはじめ、米国、中国、ロシア、中央アジアでも事業を展開しており、物流の道作りを通して、諸産業振興の場を提供している。物流産業は23兆円の規模と言われており、日本のくらしと産業を支える重要な仕事と考えている。当業界は、労働集約的要素の強い産業であり、今後労働力の不足・高齢化への対応を迫られている上、環境、エネルギー、交通などの問題が山積している。これらは全産業に関わる課題でもあり、積極的に取り組んでいきたい。

    19. ベネッセコーポレーション 山崎会長
    20. 教育・語学・出版事業とならび福祉関連事業に力を入れている。介護保険制度導入を機に、福祉・介護分野にも民間活力の導入が必要と考える。また少子化に伴い、将来、生産人口が大幅に減少することが見込まれている。子どもを安心して気持ちよく育てる環境をつくることが大事だ。今後は民間も官(公立)と共存しながら、利用者の選択肢を広げ、多様なサービスを提供していく必要がある。

    21. アイシン・エィ・ダブリュ 森社長
    22. 資本自由化による危機感から、技術力の向上に努めた結果、現在は世界各地に製品を輸出するまでに成長した。世界の中の日本という視点で考えると、海外と日本では見方が異なるものが数多くある。世界と比較したデータをより多く収集して国民に広報し、大衆の意見の中から、あるべき姿を模索していくことも必要ではないか。

    23. 平和紙業 清家会長
    24. 決算にあたり、株式の評価損を計上せざるを得なかった。リストラを行ない、営業活動の懸命の努力にも関わらず、評価損をだすのは非常に悔しく、残念だ。
      日本の紙の消費量は米国についで世界第2位だが、中国が今の日本人一人当たりと同等の消費を行なえば、世界の森林は破壊されてしまう。経団連企業行動憲章にも記されているように、自然環境の保全は非常に大切な問題だ。製紙会社は植林に力を入れているが、成木になるのに時間がかかり、その間は投資回収ができない。支援体制が望まれる。


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