経団連くりっぷ No.78 (1998年5月14日)

経団連提言/4月21日

「自由・公正・透明な情報通信市場の実現に向けた提言
−経済活性化と構造改革を目指して−」
を取りまとめ


情報通信委員会(委員長:藤井義弘氏)では、情報通信市場の活性化のための環境整備、ならびに経済社会の情報化の推進に取り組んでいるが、景気低迷が続く中、経済活性化の観点からの情報通信に対する期待が高まっている。そこで、情報通信市場の活性化のための方策等につき、主としてユーザーの視点から検討を行なった上で標記提言をとりまとめ、4月21日の理事会の了承を経て、政府等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. 望ましい情報通信市場の姿
  2. 事業者間の競争により低廉かつ多様なサービスが提供される結果、情報通信需要が刺激されて市場が拡大し、それがさらなる競争を促進するという好循環が形成されることが望ましい。

    1. 利便性の高い多様な情報通信サービスの実現
      利用者が情報通信技術の革新のメリットを享受できるよう、利用者ニーズに対応し、安価で多様なサービスが機動的に提供されている。

    2. 自由・公正・透明な情報通信市場の枠組み
      情報通信市場において、多数の事業者が、サービスの料金、質の面で創意工夫を発揮できる自由な競争、ならびに、安価で良質なサービスの提供によって利用者の獲得を競い合う公正な競争が実現し、市場が拡大している。また、事業者は適切な情報開示を行なう一方、行政においても、制度・政策や意思決定過程の透明性を確保している。行政は、利用者の立場から市場を監視し、透明な手続きで裁定を行っている。

  3. 自由・公正・透明な情報通信市場を目指して
    1. 基本認識
      技術革新が速く、市場動向の将来予測が非常に困難な情報通信分野において、利用者の利便性を向上させて市場の拡大を図るためには、事業者間の競争を促進し、事業者が自己責任原則に基づいて自由に創意工夫を発揮できるようにすることが望ましい。今後、海外諸国の模範となる競争促進策が期待され、行政においては、規制の緩和の推進、市場支配力を利用した反競争的行為の防止・是正、説明責任の徹底ならびにルール策定・裁定機能の強化等を図る必要がある。利用者のグローバル展開等をふまえ、わが国通信事業者の海外展開への支援も望まれる。

    2. 市場の活性化に向けた施策
      地域通信市場における競争をより一層促進するため、不可欠設備については、すべての事業者が、技術的に可能な任意の点で合理的な料金で同等に利用できるようにするとともに、接続の基本ルールの具体化ならびに見直しに当たっては、オープンな形で競争促進の観点から検討する必要がある。さらに多様なサービス提供が可能となるよう、第一種・第二種事業への規制緩和、約款規制の見直し等を行う必要がある。

    3. 電気通信事業法の枠組みの見直し
      現行の電気通信事業法を見直し、ルール型・事後規制型で、競争促進により利便性を向上させることを目的とする枠組みに転換する必要がある。その際、利用者の意見等に迅速かつ透明な手続きで対応する体制を整備することが望まれる。

  4. 通信・放送の融合
    1. 基本認識
      技術革新を背景として、独自に発展を遂げてきた通信と放送の伝送形態は同一となり、サービス面においても通信・放送の融合分野が発展しつつある。技術革新の成果を活かした多様なサービスの提供を阻害しないよう、制度ならびにその運用を見直す必要がある。

    2. 通信・放送融合に関する制度的枠組みのあり方
      通信・放送の融合分野については、事業者の創意工夫を可能とし、利用者の利便性を高めるため、原則自由とすべきである。近年の技術革新により通信衛星やインターネット等を利用して特定の契約者のみを対象とする情報の送信が可能になっているが、受信者が自らの意思により契約を結ばなければ当該サービスを受けられない場合、ならびにコンテントの内容が暗号技術等によって秘匿され、特定の受信者しかわからない場合には、原則として放送扱いとはしないことが望まれる。とくに、法律等で定められた特定の資格者の自宅等を対象とする情報伝送については、放送扱いとしないことを早急に明確にすべきである。コンテントについては、表現の自由を確保する観点から、当面、民間の自主規律と社会的責任に委ねることとし、政府が情報内容に介入すべきではない。

(おわりに)

情報通信市場の活性化のためには、自由かつ公正な競争の中で、事業者が自己責任原則に基づいて自由に利用者ニーズへ対応できるようにすると同時に、情報通信需要の喚起に向けて、情報化やネットワークの利用を想定していない制度の見直し、電子商取引に関する環境の整備、次世代インターネットの開発等、産業の情報化のための基盤整備に取り組むとともに、行政プロセスの電子化や行政手続・行政サービスの電子化、教育の情報化、地域の情報化等の公的分野の情報化、情報リテラシーの向上などを図る必要がある。とりわけ、公的分野の情報化については、景気刺激効果が大きく、強力に推進すべきである。
情報通信は、21世紀のわが国を先導するリーディング分野として期待されており、情報通信行政もそれに相応しく、他分野の行政を先導していくことが求められている。

以 上 


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