経団連くりっぷ No.78 (1998年5月14日)

第7回日本ブラジル経済合同委員会第4回事務レベル打合せ会/4月17日

メルコスールへのブラジルの対応


5月6、7日にサンパウロで開催予定の第7回日本ブラジル経済合同委員会に向けた第4回事務レベル打合せ会を開催し、上智大学外国語学部の水野 一教授よりメルコスールの現状とブラジルの対応について説明を聞いた。水野教授は、ブラジルでは地域によりメルコスールに対する姿勢に著しい違いが見られると述べた。

  1. メルコスールの効果
  2. メルコスール域内諸国間の貿易は、90〜96年の間に4倍以上に増加し、この結果、貿易全体に占める域内貿易のシェアは9.9%から27%に伸びた。またブラジル国内への外国からの直接投資は、91〜97年の間に9億ドルから145億ドルへと大きく増加した。
    こうした貿易・投資面での効果以外にも、メルコスールの発足以降は、加盟国間の政策協調が確保されることにより、経済政策への国際的な信頼性が高まってきている。例えば、ブラジルは96年6月に自動車・繊維の輸入関税を引き上げ、各国からの反発を招いたが、今後はこうした一方的な措置をとることはできないと見られる。

  3. 対メルコスール貿易赤字の拡大
  4. ブラジルでは貿易赤字が拡大し、楽観できない状況にあるが、メルコスールに対しても95年、96年連続して入超となっている。国別に見ると対アルゼンチン貿易のみが入超であり、特に石油輸入が増加している。今後、アルゼンチン・ブラジル間での国際分業が進めば、ブラジルからの輸出が増加する可能性がある。
    ブラジルにとってメルコスールは輸出先の17%を占めるに過ぎない。むしろEUが27.3%を占めるなど結びつきが強く、こうしたことを背景にメルコスールはEUと枠組み協定を締結している。輸入先ではメルコスールが15.8%を占めているが、最近はアジアからの輸入も伸びている。

  5. 南北間の著しい姿勢の違い
  6. 米国は北米自由貿易協定(NAFTA)を2005年までに米州全域に拡大し米州自由貿易地域(FTAA)を完成させたいと考えており、96年にはクリントン大統領がカリブ・中米・南米諸国を歴訪して協力を呼びかけた。
    これに対し、ブラジル政府はまずメルコスールを固めた上で、次にアンデス共同体との通商交渉を進めたいと考えている段階であり、米国の性急な方針に当惑気味である。
    他方、ブラジル国内も決して一枚岩ではない。マナウスでは、メルコスールにはあまり関心がなく、むしろ2013年のフリーゾーン廃止後の措置に関心がある。メルコスールの恩恵の薄い北部・北東部では、メルコスールよりアンデス共同体への関心が高い。他方、アルゼンチン、ウルグアイに近い南部・南東部では、メルコスールへの期待が大きく、150億ドルに上る新規投資が予定されている。


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