第7回日本ブラジル経済合同委員会(団長 室伏 稔氏)/5月6日〜8日
5月6日、7日の両日、サンパウロにおいて、日本とブラジル双方から合計約300名の参加者を得て、第7回日本ブラジル経済合同委員会を開催し、投資・貿易関係の促進に向けて、活発な議論を行なった。その後、代表団の一部はブラジリアを訪れ、カルドーゾ大統領をはじめとする政府首脳を表敬した。以下は合同委員会の概要ならびに政府首脳の発言要旨である。
日本側より、日本経済の構造改革と海外直接投資の動向について説明した。ブラジル側は改革の重要性を理解すると同時に、日本政府の一連の措置が経済の活性化につながることへの強い期待を示した。
続いてマラン大蔵大臣が、ブラジル経済の順調な成長ぶりを説明した。この中で、ブラジルは財政と貿易の双子の赤字を抱えているが、レアルの大幅切下げは行なわず、市場開放、通貨安定、ブラジル・コストの削減により輸出競争力の強化に努めるとともに、民営化、社会保障制度の見直し、行政改革等により財政収支改善を進めることを強調した。
近年、ブラジルで急速に進みつつある民営化がもたらす投資機会について、社会経済開発銀行(BNDES)代表が説明し、日本企業の積極的な参加を呼びかけた。これに対し日本側は、ブラジル経済の効率化や財政改革に資するものとして民営化を評価し、各種民営化プログラムに対する関心を示した。
今後の対ブラジル投資については、日本側より、ブラジル経済の安定化、メルコスールの成功などを背景として、製造業投資に加え、今後、インフラ分野での投資増加も期待できると述べた。また、これを実現する上で、ブラジル・コストの削減、法制度の簡素化、継続的な情報提供の重要性を強調した。
ボタフォゴ商工観光大臣は、ブラジルがメルコスール(南米共同市場)の強化とともに、グローバル・トレーダーとして世界の他の経済ブロックとの貿易を重視していることを強調した。また米州統合へのプロセスは不可逆的なものであるとして、今後の対ブラジル投資に当たり、米州全域にわたる市場の獲得を視野に入れることが重要と述べた。
日本側からは、APECが地域の貿易の自由化に果たす役割を説明するとともに、メルコスールの発展にブラジルが中心的な役割を果たすことへの期待を表明した。
今次合同委員会では、初めての試みとして、鉄・非鉄金属、自動車・自動車部品、エレクトロニクス製品、通信、農業関連産業の5つの分科会に分かれて討議を行なった。今後の日伯企業間の協力のあり方を含めた具体的かつ建設的な意見交換が行なわれるなど、大きな成果を上げた。
就任以来、経済の安定化、金融部門の改革を手がけてきた。改革の成果と高金利政策などの対応により、アジア通貨危機の波及を食い止めることができた。現在、財政赤字削減のための各種憲法改正を進めている。
輸出競争力の向上、海外からの投資誘致に努力している。投資、技術革新、技術移転などの面で、日本はブラジルにとって不可欠のパートナーである。合同委員会の成果が投資の拡大に結びつくことを期待する。
ブラジルは長期にわたる不安定な時期を乗り切り、今では政治・経済が安定している。96年の日伯修好100周年、本年の日本人ブラジル移住90周年などを契機に、日伯経済関係がさらに発展することを望んでいる。特に、日本企業がブラジルのインフラ部門の民営化に注目することを期待する。
メルコスールは、モノ・サービス貿易の自由化、各種制度の統一化により、商品、サービス、人、資本が自由に移動できる単一市場を構築することを最終目標としている。将来的には南米全体にまたがり、しかも域外国にも開かれた自由貿易地域を目指している。
ブラジルにとって米州自由貿易地域(FTAA)交渉は優先的な案件ではない。むしろマルチの議論を重視しており、WTOにおける新ラウンドの開始を望む。
通信分野では、独占企業であったテレブラスの民営化を進めると同時に、アナテルという独立した監督機関を設置し、競争の管理、民間企業との契約を任せることとした。
テレブラスは固定電話、携帯電話、国際・州間電話を地域毎に計12社に分割・民営化する。その後5年の経過期間を経て完全に自由化する。民営化に当たり、外資の参加に制限は設けない。
農務省では、半砂漠地帯のトロピカルフルーツ栽培プロジェクトについて説明があり、日本企業の参加に期待が示された。
鉱山・エネルギー省では、石油関連事業への民間の参加の自由化について説明があり、石油探査事業、天然ガス・パイプライン敷設事業等への日本企業の投資を求めた。電力分野の民営化についても説明があった。
運輸省では、運輸関連インフラ整備に関するビジネス機会について説明があり、日本企業の参画に期待が表明された。