日本メキシコ経済委員会第18回定時総会(委員長 川本信彦氏)/5月21日
98年度の日本メキシコ経済委員会定時総会を開催し、97年度事業報告・収支決算、98年度事業計画・収支予算ならびに役員改選の件を審議、了承した。審議に先立ち、ウリーベ駐日メキシコ大使より、最近のメキシコ情勢と日伯関係について説明を聞いた。以下はウリーベ大使の説明の概要である。
94年末から95年のメキシコの通貨危機は、貴重な教訓を遺した。それは強いリーダーシップを持つ者が適切な経済政策を実施すれば、危機は克服できるということである。
また技術革新により国際的な資金移動がますます活発化するなかで、銀行監督当局には、予期せぬ変動に迅速かつ適切に対応する訓練と、新しい金融派生商品に関する知識が必要とされる。
メキシコ経済は94年末の通貨危機の影響を克服しつつある。98年2月の工業生産は前年同月比7.2%増、消費は同11.01%増となった。通貨危機の大きな原因であった経常収支赤字は、95年の通貨切下げによる貿易収支の改善により、92〜94年の対GDP比7%弱から95〜97年は同1.0%にまで削減された。
97年の輸出総額は1,100億ドルに達し、メルコスール加盟国の合計を上回った。輸出に占める石油関連のウェイトは7%まで下がったが、税収は依然として石油関連に依存しており、国際市況の下落の影響を大きく受ける。
インフレは全体的に下降傾向を維持している。為替は現時点で1ドル=8.575ペソであるが、98年末には9ペソ程度にまで下がると予想している。外貨準備は300億ドルに達し、ほぼ3カ月分の輸入額に相当する。
98年はインフレ率を12%に抑え、経済成長率5%を達成することにより、最低60万人以上の雇用の創出を目指している。
セディージョ大統領は、経済危機のなかでも、過去10年間進められてきた構造改革を中断せず、むしろ加速することを決断した。特にインフラ部門の規制緩和、民営化を進め、民間投資を活性化して成長に結び付けていく方針である。
工業化を進めるメキシコと、脱工業化により生産の海外移転を進める日本との間で、今後ますます補完性が強まる。昨年、日本企業が発表した対メキシコ投資計画は総額31.6億ドルに上り、特に発電、自動車、電子分野が多い。98年も電力庁による20億ドル以上の入札案件が予定されていることもあり、引き続き投資が伸びると期待している。