経団連くりっぷ No.81 (1998年6月25日)
なびげーたー
常務理事 立花 宏
規制緩和は、ここにきて一服感が漂っているが、官主導から民自律の経済社会へ変革する牽引役であり、内需拡大につながる分野の緩和を急ぐ必要がある。
1995年4月から始まった規制緩和推進3ヵ年計画は、本年3月末をもって終了し、4月から新たな3ヵ年計画がスタートした。過去3年間の実績をみると、例えば下記の通り広範な分野で規制緩和が進み、これらを活用した企業の取組みによる効果も着実に国民の間に浸透している。
土地・住宅 | : マンション共用スペースの容積率算定からの除外、建築基準の性能規定化 |
運 輸 | : 自家用車の車検合理化、需給調整規制の廃止時期の明示 |
通 信 | : 過剰設備防止条項の廃止、公−専−公接続(国内・国際)の解禁 |
エネルギー | : 特石法の廃止、卸電気事業の原則自由化 |
流 通 | : 大型店やコメ、酒、ガソリン販売等の出店規制緩和、景品規制の緩和 |
金融・証券 | : 外為法の抜本改正、ストックオプション制度の導入、自社株取得規制の緩和 |
独禁法 | : 純粋持株会社の解禁 |
雇 用 | : 有料職業紹介事業の取扱い職種のネガティブリスト化 |
ところで、目下、景気対策や金融不安への対応、財政構造改革、さらには中央省庁再編などの改革論議に焦点が移った結果、規制緩和のウエイトが相対的に下がり、なんとなく一服感が漂っている。むしろ規制緩和によるデフレ効果を懸念して先送り論も一部で聞かれる。しかし見失ってならないのは、規制緩和は、官主導の社会から民自律の社会への牽引役であるという点であり、一旦手綱をゆるめると元の木阿弥になりかねない。
こうした2つの事情を考え併せると、規制緩和の当面の進め方としては、推進分野を重点化し、内需拡大とくに雇用の拡大や新事業の創出につながる項目に的を絞る必要がある。具体的に考えられる主な項目を例示すれば、以下の通りである。