経団連くりっぷ No.81 (1998年6月25日)

ヨーロッパ地域委員会(共同委員長 若井恒雄氏)/6月4日

Euro導入の国際市場への影響とEUのWTOへの対応


ヨーロッパ地域委員会では、日・EUハイレベル協議に出席するために来日した欧州委員のベーゼラー対外関係総局長ならびに経済金融総局のディクソン局長を招き、EMU(欧州経済通貨統合)、特に単一通貨Euro導入に伴う国際経済への影響、およびEUの今後のWTOへの対応に関してお話を伺うとともに意見交換を行なった。以下はベーゼラー総局長およびディクソン局長の発言概要である。

  1. アジア経済の潜在的成長力を確信
  2. 世界経済は相互依存の関係にあり、今般のアジア金融危機は深刻な影響を国際経済に及ぼした。欧州委員会はアジア経済の潜在的成長力を確信しており、日本と協力して同地域の経済再生を支援する準備がある。また、今回の危機を通じて市場開放、自由貿易の重要性が再確認された。この経験を踏まえ、アジア諸国は一層の市場開放と自由化政策を推進し、多国間協定の批准をすべきである。今後、日・EUはASEMの場を通じてリーダーシップを発揮し、WTOが提唱している多国間貿易制度を強化するとともに、2000年にソウルで開催予定の次回ASEM第3回会合の成功を目指して協力すべきである。

  3. Euro導入と国際経済の安定
  4. Euroの導入はEU経済だけではなく、国際経済にも多くの恩恵をもたらす。国際通貨としてのEuroの出現は米ドルとの対決競合構造というゼロ・サム・ゲーム的状況を作り出すことを企図したものではない。米ドル一極体制から多極体制への移行が行なわれ、国際レベルでの通貨の安定が確保される。Euroは国際経済安定化への牽引車の役割を果すことになる。
    欧州委員会は、構造改革を実施するよう各国政府に勧告する等、EMU実現に向けて努力をしてきた。このため欧州各国は数年間にわたり、マクロ経済の不均衡是正とマーストリヒト収斂基準を満たすため緊縮財政、インフレ収束、構造改革等の努力を行なってきた。その結果、欧州経済は変貌し、現在、大変好調である。欧州は内外の企業に開放された巨大単一市場を提供するとともに、安定と繁栄を約束する。

  5. EMUは進化する経済制度
  6. EUは57年のローマ条約以来進化し、92年のマーストリヒト条約締結でEMUの具体的なスケジュールを確定した。来年1月1日には最終段階に入り、Euroが導入される。当初加盟11カ国間の貿易は活発化し、経済成長も各国同質になる等ハーモナイゼーションされてきている。また、失業問題も成長・安定パッケージの結果、長期的には改善の方向にある。


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