経団連くりっぷ No.82 (1998年7月9日)

経団連提言/6月18日

新産業・新事業創出に関する緊急提言をとりまとめ


新産業・新事業委員会(共同委員長:出井伸之氏、高原慶一朗氏)では、5月下旬に米国における新産業・新事業隆盛の現状や背景について実態調査を行ない、その結果を踏まえて、6月18日に新産業・新事業委員会と同企画部会の合同会合を開催し、「新産業・新事業創出に関する緊急提言−大学・企業の起業家精神の発揮を望む−」をとりまとめ、政府・与党関係方面に建議した。以下はその概要である。

「新産業・新事業創出に関する緊急提言
−大学・企業の起業家精神の発揮を望む−」の概要

基本的考え方

  1. 新産業・新事業支援のための制度、仕組みの整備が進む一方、起業化精神を発揮する人材、起業を実務的に支援できる人材、制度を運用できる人材が不足。
  2. 新産業・新事業創出に向けた人的インフラの充実を図るためには、挑戦を評価し、後押しするような社会風土の確立が必要。
  3. 新産業・新事業の基盤となる技術や人材を送り出す大学と、経営資源が集中している大企業の意識改革、具体的取組みが不可欠。
  4. 支援インフラとしてのベンチャー・キャピタルの充実、役割発揮も急務。

  1. 大学のベンチャー化(大学が起業家精神の醸成と実践を主導)
    1. 起業家教育の推進と大学設置基準等の見直し
    2. 産学協同の推進と国立大学の教員の兼業規制の見直し
    3. 企業への技術移転の拡充とスタッフの強化(企業人等の活用)等

  2. 大企業のベンチャー化
    1. 挑戦を評価、失敗を学習の一環として受容し、失敗経験を活用すべき。
    2. 経営層がリーダーシップを発揮すべき。コーポレート・ベンチャーの独自ルールの容認、ストックオプションを含む成功報酬の活用等が必要。

  3. 真のベンチャー・キャピタルの確立
    1. ベンチャー企業の経営の積極的支援が期待。
      1. 経営体制構築への積極関与、経営陣強化のための人材斡旋、紹介
      2. 経営戦略に関する積極的指導、
      3. 新規販売先、提携先の紹介等
    2. ベンチャー・キャピタリスト拡充のため、大胆な報酬制度の導入等が必要。

  4. コーポレート・パートナーシップ(対等な企業間連携)の推進
    1. 独立ベンチャーとの連携の推進、オープンな事業環境の整備等

  5. 環境整備
    1. 税制見直し(法人実効税率引下げ、連結納税制度の創設、所得税の累進構造の是正、エンジェル税制の拡充、ベンチャー・キャピタル税制の導入、ストックオプション税制の拡充、寄付金税制の拡充等)
    2. 規制緩和(倒産法制の見直しの検討、子会社設立手続きの簡素化、年金ポータビリティの実現等)
    3. 店頭登録市場の活性化
    4. 行政サービスの民間へのアウトソーシングの促進
    5. 公共調達における独立ベンチャーの参入機会の拡大

以 上


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