経団連くりっぷ No.82 (1998年7月9日)

防衛生産委員会(座長 西岡総合部会長)/5月29日

防衛技術研究開発の課題と今後の展望

−別府防衛庁技術研究本部長との懇談会を開催


わが国の安全保障において、質の高い防衛技術基盤の維持・育成は重要な課題のひとつである。近年の防衛予算の削減の中で研究開発費も抑制されており、今後の技術研究開発のあり方はその一翼を担う産業界にとっても重大な関心事項である。そこで、防衛生産委員会では、別府防衛庁技術研究本部長を招き、標記テーマについて説明を聞いた。

  1. 技術研究と技術開発
  2. 装備品の国内開発においては、基礎的な研究である技術研究を行ない、運用構想が固まって技術開発へと移行する。かつては、開発への移行を前提に研究を進めがちで、財政当局と見解が異なることもあったが、現在では研究と開発は明確に区分されている。
    平成10年度は57件の試作委託プログラムのうち、46件が研究、11件が開発であり、約360億円が研究、約720億円が開発に充てられる予定である。また、将来の開発の夢となるような自由な基礎研究として、別枠で約10億円の研究を行なっている。
    先進技術の有効性および装備としての実現性の検証を行なうため、開発前の要素技術の研究としては技術実証型研究を推進している。現在では地雷探知等の研究を行なっており、今後は開発を生み出すような新たな技術実証型研究を立ち上げていきたい。

  3. 日米共同研究の推進
  4. 日米共同研究はハイブリッド・ロケットエンジンで5件目となる。また、F-15戦闘機の緊急脱出装置については日米で共同開発することとなった。共同研究は、日米双方の研究体制の違いもあり煩雑な面もあるが、研究者にとっては大きな自信となる。また、重点思考した特別研究を設定しており、企業のエンジニアとも意見交換を行ない、共同研究のテーマを発掘していきたい。
    米国は防衛分野の研究開発の25%を国際共同プログラムしたいとしている。今のところ日米が成果を分かち合うのは研究のみであるが、わが国にとっても魅力あることである。現在、共同研究を推進する上での課題は、米国側で共同プログラムを予算化する条件が厳しいことにある。

  5. 今後の研究と開発のあり方
  6. 従来の国内開発はその前の研究フェーズを合わせると長かったが、自衛隊のニーズに間に合わせるようにその期間を短縮していきたい。また、今後は新規の開発はさらに厳選される傾向にあり、現有装備の改良が増えることになろう。
    国産装備については生産量が少ないこともあり割高となっているが、コストを下げる努力と合わせて、メーカーとも連携してアフターケアを充実させ、国産装備品に対する信頼感をさらに高めるような体制を整備していきたい。


くりっぷ No.82 目次日本語のホームページ