経団連くりっぷ No.83 (1998年7月23日)

なびげーたー

活発化する日ロ経済関係拡大への動き

国際本部副本部長 江部 進


橋本首相とエリツィン大統領との二度の非公式会談を基礎に、日ロ経済関係拡大への動きが活発である。ロシアの期待は、日本からの直接生産投資の拡大と極東地域と日本との経済協力の促進である。

去る7月13日から14日まで公式実務訪問のため来日したキリエンコ・ロシア連邦首相が、今井会長はじめ経団連首脳と懇談、引き続き日本ロシア経済委員会で講演を行った。昨年11月以降9ヶ月という短い期間に両国の最高首脳の往来とロシア首相の来日が実現したことは、画期的なことである。

2回にわたる非公式首脳会談は、最初のクラスノヤルスク会談で合意された「橋本・エリツィン・プラン」に基づき、経済関係拡大への大きな潮流を生み出し、キリエンコ首相の来日はこれを加速した。投資保護協定が実質合意され、また、4月の川奈における非公式会談でエリツィン大統領から提案された「日ロ投資会社」について、両政府間で取りまとめた基本コンセプトが発表されたのである。

「日ロ投資会社」の詳細は今後煮詰めらることになるが、民間の意見を十分徴して民間に活用されるものにすることと、小さく生み大きく育てる視点が大事である。さらに重要な点は、コンセプトを見ると、投資に関する紛争などの問題解決を支援する両政府責任者関与の協議機関の設置が盛られているが、この協議機関、投資保護協定、投資会社といった一連の枠組みにより、投資がしっかり保護されることである。

投資保護協定については、年内調印の運びとなろうが、気が早いがロシア議会の迅速な批准を求めておきたい。なお、キリエンコ首相は、経済金融安定化計画の実施のための諸法案のひとつとして、運用の統一と国際的整合性を図る税法が議会の承認を得、8月1日より実施される見込みであると述べた。投資環境が着実に整備されることを歓迎したい。

極東開発の協力では、日ロ経済委員会はインフラの整備とそのためのロシア政府の支援が重要としており、この点でキリエンコ首相が、かかる案件への公的融資に対する政府保証は柔軟に臨む、と明言したことを高く評価したい。

キリエンコ首相は、燃料エネルギー資源開発、自動車やテレビの組立てなど生産投資、シベリア幹線鉄道等による国際貨物輸送、通信の整備などについて日本企業の協力を求めた。日本ロシア経済委員会では、このような協力の実現のために、貿易投資環境の改善をロシア政府に予ねて働きかけてきたが、安西日本ロシア経済委員長は、公的融資に対する保証、投資および極東経済開発の3点に関し、会員の意見を同首相に改めて伝えた。日ロ経済委員会では、近々これを文書にしてロシア政府に具申する。


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