経団連くりっぷ No.83 (1998年7月23日)

第118回関西会員懇談会/6月30日

21世紀に向け新たな発展の基盤を確立する

−関西地区会員と懇談


今井会長就任後初の関西会員懇談会が、関西地区会員約250名の参加を得て大阪市において開催された。当日は、今井会長、伊藤・樋口・熊谷・古川・辻・前田の各副会長が出席し、活発な意見交換を行なった。また、懇談会に先立ち、吹田市の大阪大学レーザー核融合研究センターを訪問し、ガラスレーザー装置によって核融合反応を起こさせるレーザー核融合実験施設を視察した。

  1. 関西地区会員からの発言
    1. 閉塞感打破に向けた3つの課題
      田代 和 氏(近畿日本鉄道社長)
    2. 関西経済はアジア向け輸出の激減や中小企業の経営環境悪化などにより、かつてない危機的状況にある。関西経済の活性化には次のような課題がある。第1は、貸し渋りの解消である。金融再生トータルプランの早期実施、金融機関の不良債権処理により、正常な資金供給機能を回復することが必要である。第2は、新規産業の創出である。大阪商工会議所では、グローバル・ベンチャー・フォーラムを開催し、ベンチャー企業の育成に努めているが、経団連、政府とも連携して新規産業創出への取組みを強化していくべきである。第3は、構造改革後の日本の将来についての明確なビジョンを示すことである。経済界としても、主体的に将来ビジョンを発信し、現在の閉塞感を打破していかなければならない。

    3. 製造業の活性化、産業の高度化の促進
      三野重和 氏(クボタ会長)
    4. 関西、ひいてはわが国製造業の再構築と発展のために推進すべきことを述べたい。
      第1は、産業集積を発展させ、効率的に利用できるシステムの構築である。集積を妨げる工場等制限法は撤廃すべきである。第2は、科学技術の振興と産学連携研究の強化・促進である。基礎研究分野の拡充に向けて政府支出の増額を図るべきである。第3は、外資系企業の誘致である。外資系企業のニーズにあわせて相談・情報提供をする体制を構築すべきである。第4は、少子化に対応した技術、技能の伝承の具体策、援助策の構築である。
      少資源で、少子化・高齢化の進むわが国にとって、製造業の活性化、産業の高度化は、国の将来を左右する問題である。今後とも製造業の発展のために努力をしていきたい。

    5. 国土構造改革に不可欠な産業の活性化
      秋山喜久 氏(関西電力社長)
    6. 「新しい全国総合開発計画」が示す国土構造改革の方針には次のような特徴がある。
      第1は、「国土の均衡ある発展」から「魅力ある多軸型の国土構造」への転換である。地域が魅力ある産業政策を展開し、地場の産業を育てていくことが重要である。経団連には新しい産業ビジョンを出してほしい。第2は、開発主体を「国主導」から「地域主導」に転換し、地域の選択と責任による国土づくりを目指す点である。行政のみならず市民の建設的な参加、地域団体の協力を得て多様な主体による地域政策を展開すべきである。第3は、国土基盤の整備を地域の連携によって行なうこととした点である。地方公共団体が広域的に連携し、広域的なエリアの中で優先順位をつけて整備を行なう仕組みを構築すべきである。関西では地方公共団体、経済界が「関西協議会」設立に向けて動き出しているが、全国に市町村が3,255もあるというのは多すぎる。さらに合併を推進すべきである。

    7. 環境保全に必要な企業活動の展開
      藤原菊男 氏(島津製作所会長)
    8. 環境保全に必要な企業活動は3つある。
      第1は、環境に配慮した事業活動である。企業は、環境管理部門を設けて、省エネルギー、省資源、リサイクルを計画的に実行するシステムを構築すべきである。第2は、環境問題を解決するための環境関連製品・サービスの提供である。島津製作所では今年5月に「島津環境ホルモン分析情報センター」を設置したが、地域で高い関心を呼んでいる。第3は、一般の製品においても環境保全を配慮した製品を提供することである。今後はすべての製品に、エネルギー効率に優れ、かつリサイクルなど製品廃棄時の処理を考慮した技術を採用し、ライフ・サイクル・アセスメント手法の導入を進めるべきである。
      経済活力を失わず、環境ビジネスを育成しながら資源循環型経済システムを構築していくためには、引き続き、産業界が主導的に行動していくべきである。

    9. アジア経済危機への対応
      千畑一郎 氏(田辺製薬会長)
    10. 関西経済連合会では今年2月にタイ、マレーシア、シンガポールにASEAN使節団を派遣し、各国首相、閣僚らと懇談した。私もこの使節団に参加してきたところである。懇談では、インドネシア経済の崩壊が起こらない限り、シンガポールはもちろんタイ、マレーシアも2〜3年で回復軌道に乗るであろうが、その前提として、邦銀をはじめとする対外債務の借換えが円滑に行なわれること、日本が早く不況を克服し、内需を拡大し、ASEAN諸国からの輸入を拡大することが強く要望された。関経連ではこれを受けて、ASEAN諸国の経済再建のために、日本の内需拡大、金融支援が必要であること、さらには円の国際化の推進、技術支援、サポーティングインダストリー育成のための人材育成への援助などを提言した。今後ともASEAN諸国への支援・協力をしていきたい。

  2. 経団連側発言
  3. 経団連側は「実質減税確保が何よりの課題」「製造業に魅力ある環境づくりを目指す」(前田副会長)、「公的年金制度改革に取り組む」「確定拠出型年金の導入」(伊藤副会長)、「金融システムの再生を図る」「貸し渋りについては、金融機関は自らの事情を誠意を持って説明すべき」(樋口副会長)、「科学技術振興や人材育成、環境・エネルギー問題等においてアジア各国との協力の枠組みを築きたい」(熊谷副会長)、「経団連環境自主行動計画のフォローアップ結果をCOP4の場で発表したい」(辻副会長)、「国の政策転換を反映した地域政策、地域レベルでの規制緩和が必要」(古川副会長)と発言し、最後に今井会長が「金融問題が、企業活動に与える影響を少なくするとともに、今後はプラスの結果をもたらすよう一層努力したい」と締め括った。


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