経団連くりっぷ No.83 (1998年7月23日)

ウルディノーラ・コロンビア大蔵大臣との懇談会(座長 高垣中南米地域委員長)/6月29日

コロンビアにおける経済開放政策の成果


第5回日本・ラ米諸国経済交流促進シンポジウムに出席するため来日中のウルディノーラ・コロンビア大蔵大臣を迎え、コロンビアの経済情勢および経済政策について説明を聞くとともに懇談した。以下はウルディノーラ大臣の説明要旨である。

  1. 社会政策の重視
  2. 過去25年間、コロンビアはブラジルと並びラ米諸国で最も高いGDP成長率を達成してきた。特に、経済開放政策が効を奏し、90年代に入り民間投資の増大が見られる。この結果、公共支出を国民に対する社会サービス面、すなわち健康保険、教育、治安、司法等に充てることが可能となった。

  3. 海外からの直接投資の増加
  4. 他のラ米諸国同様、コロンビアの貯蓄率はアジア諸国の半分程度しかなく、これを補うため海外からの直接投資が重要となっている。開放政策の結果、内外資の扱いは無差別となり、また民営化の進展もあり海外からの直接投資は大きな伸びを見せている。輸送や通信インフラの不備の問題も、徐々に解決されつつある。

  5. 石油価格の下落の影響
  6. 財政面では、中央政府の若干の赤字を、石油等の国営企業の収益および民営化の収入により補填している状況である。しかし、石油の国際価格の下落により、石油企業の収益による補填が困難となった結果、下落前の石油価格に基づいて立てられた予算は見直しを余儀なくされた。メキシコ、ベネズエラ等他の産油国でも同じ状況である。
    対外債務に関しては、他のラ米諸国やアジア諸国と比べて保守的である。1年以内に支払期限が到来する債務は15%に満たず、金融危機を起こしたタイ等とくらべ短期債務が少ない。

  7. 貿易構造の変化
  8. 輸出額に占めるコーヒーの割合は以前は80%を占めていたが、97年には19%にまで下がり、代わりに軽工業品が45%を占めるようになった。工業化推進の成果であり、またアンデス同盟をはじめとするラ米諸国間の経済統合の効果によるものである。
    経済開放政策の結果、輸出を上回る輸入の伸びが見られるが、これは国際競争力強化のため、資本財の輸入により機械設備の充実、技術力の向上を図ったためである。経常赤字を埋めるための資金は、外国からの直接投資あるいは長期の資金によって賄われている。なお、外貨準備高は90〜97年の間に2倍に増加している。

  9. 今後の見通し
  10. 昨年後半以降、アジアの経済危機の影響でコロンビアは困難に直面した。経済開放政策をとる前にはなかったことであり、経済のグローバル化を感じている。しかし最も困難な時期はすでに脱しており、今後は石油価格も上昇し、経済も回復に向かおう。98年は石油の国際市況の回復状況にもよるが、4.5%程度の経済成長を見込んでいる。


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