経団連くりっぷ No.83 (1998年7月23日)

日本ベネズエラ経済委員会(委員長 亀高素吉氏)/7月6日

ベネズエラ大統領選挙の展望

−亀高・フォルメル両委員長が懇談


日本ベネズエラ経済委員会の亀高委員長は、来日したフォルメル・ベネズエラ日本経済委員長と、最近の両国の政治・経済情勢をめぐり意見交換を行なった。この中でフォルメル委員長は、本年12月に予定されているベネズエラ大統領選挙の展望につき、次のような説明を行なった。

  1. 本年11月に国会議員および州知事選挙、12月に大統領選挙が行なわれる。二大政党であるAD(民主行動党)およびCOPEI(キリスト教社会党)は国民の支持を失っており、11月の国会議員選挙では二大政党以外の多数の立候補者がでる見込みである。ベネズエラでは最近、国会の力が増してきており、11月の国会議員選挙は12月の大統領選挙にも影響を及ぼすと考えられる。

  2. 大統領選挙の候補者のうち、元ミス・ユニバースでチャカオ市長のサエス氏は、本年3月に40%だった支持率が6月には16%まで落ちており、当選の可能性は低くなった。一方、92年のクーデター未遂事件の首謀者であるチャベス氏が28%から42%に、また元カラボボ州知事のサラス・ロメール氏が10%から20%にそれぞれ支持率を伸ばしている。

  3. 本年5月25日〜31日の別の世論調査によると、チャベス氏支持は24.7%あるが、不支持も22.8%にのぼっている。一方サラス・ロメール氏は、支持は14.5%にとどまっているものの、不支持は1.5%と非常に低い。サエス氏をはじめとする他の候補者に当選の可能性がないとすれば、死票を投じるのを避けたいと考える有権者はサラス・ロメール氏に投票するだろう。サラス・ロメール氏は優秀な行政官としての経験を持っており、政治的な教育も受けている。他方、チャベス氏は元大佐であって、政治家としての経験も行政官としての経験もない。

  4. チャベス氏は主に貧困層に支持されている。特にサンペール現政権が病院の設置、教育、輸送インフラ整備、治安等の問題を解決できなかったことに国民は憤りを感じており、チャベス氏支持は現政権への反感のあらわれと言えよう。一方、ベネズエラ財界は概ねサラス・ロメール氏を支持している。石油関係の専門家もブレーンとしてついており、石油政策や経済政策についても系統だったプログラムを作成することができると思われる。

  5. サエス氏はCOPEIの候補者となっているがCOPEI党員ではない。高い支持率を得ていたことからサエス氏を支持したCOPEIは、当選確率が低いと見ればサラス・ロメール氏支持に回って新政権の一角を占めようとするかも知れない。

  6. 総括すると、今回の大統領選はチャベス氏、サラス・ロメール氏の2人の候補者に絞られ、サラス・ロメール氏が当選する可能性が高い。もしチャベス氏が選ばれるようなことになれば、国会、政党、米国、文明社会等、強い反対勢力と対峙せざるを得なくなることであろう。


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