国土・住宅政策委員会（委員長古川昌彦氏、共同委員長田中順一郎氏）／７月10日

都市計画道路の整備により都市機能の更新を推進

－東京都幹部との懇談会

土地の有効利用、流動化を進める上で、都市計画の決定権を持つ自治体が都市再開発の推進等を着実に実行することが重要である。とりわけ東京圏の再生は、わが国経済を活性化していく上で不可欠との観点から、国土・住宅政策委員会では、東京都幹部（青山政策報道室理事、成戸都市計画局技監、佐藤建設局長他）との懇談会を開催し、都市政策、土地・住宅政策等につき懇談した。

東京都側説明

成熟社会における都の政策展開

97年、東京都では98年度から2000年度における施策展開のみちすじを明らかにする『生活都市東京の創造─重点計画』をとりまとめた。この計画では都の計画として初めて東京都の人口が減少していくことを予測した。95年の段階で1,177万人であった人口は、都心居住の推進などを勘案しても2005年には1,170万人程度となり、2015年には1,140万人程度になると予測される。また65歳以上の高齢者の構成比は95年の13.0％から2005年に18.7％になると予測され、成熟社会に向けた対策、とりわけ遅れている福祉政策等を早急に講じなければならない。

活力とゆとりに満ちた都市づくり

東京の改造は、成熟社会に向けた施策を一体的に進めるチャンスであると捉えている。都では従来、池袋、新宿、渋谷など副都心の整備を進める多心型都市づくりに力点を置いてきた。現在では、これに加えて、都心部の整備を柱のひとつに挙げ、大手町、丸の内など中枢機能・基盤などの既存ストックを活かしつつわが国を代表する地区として整備を図る「更新都心」と、日本橋、銀座などの業務商業機能の再編を目指す「再編都心」とにゾーニングを行ない、地域の都市基盤の整備状況等を勘案しながらセットバックによる容積率の緩和等の措置を講じている。都心近接地域等も含め、再開発事業、区画整理事業によって街区を再整備するなどの取組みを行なっているが、バブル前には可能であった商業・業務施設を中心に組み込んだ再開発が、現在の経済情勢では困難になっており、事業計画の変更を余儀なくされているものも多い。それでも大崎駅東口、晴海、六本木、東品川、二子玉川などで計画は進捗している。

また、近年、国の土地政策として、「敷地整序型土地区画整理事業制度」や「特定事業参加者制度」など、新たな制度が導入されているが、このうち「高層住居誘導地区」については、現在、対象地域の選定を特別区へ依頼中である。さらに、今般、なるべく多くの地権者の同意を求めていた市街地再開発組合の設立の要件が、法定通り地権者の３分の２でよいことが政府で確認された。都としてもこれら施策について、より柔軟なかたちで対応することとしたいと考えている。今後は経済の動向、民間活力の活用も意識しながら、まちづくりを進めていきたい。

都市計画道路の整備

「道路整備は車を増やし環境を悪化させる」という時代は去り、むしろ外環道の大泉I.C.を整備することにより、関越道の練馬I.C.付近の走行量が６万4,000台から５万1,000台に減ったといった事例に見られるようにボトルネックの解消は急務である。都は環状６号線など区部環状道や多摩の南北方向を重視した幹線道路網の整備を行なっているが、東京都の都市計画道路の完成率は計画の54％に過ぎない。既成市街地における道路率の割合を見てもワシントンD.C.は25.0％、パリ20.0％、ロンドン16.6％に比して東京は15.2％しかない。これは名古屋、大阪に比しても少ない割合である。またラッシュ時に１時間当たり30分以上閉まっている踏み切りは都内1,200カ所の踏み切り中、460カ所にも上り、立体交差事業の推進がぜひ必要である。

都区部における日中の自動車の平均速度は全国平均34.1㎞/hの半分以下の15.7㎞/h、都全体でも18.6㎞/hであるが、現在の走行速度を全国並みの30㎞/hにすれば約5兆円の経済効果がある。このうち燃料は1,500億円分節約され、環境負荷は４分の１削減されると試算されている。道路整備は建設投資等、経済的な誘発効果も大きい。

ところが、道路整備特別会計の国費（97年度）３兆5,306億円のうち、東京都への配分は4.4％の1,537億円に過ぎない。全国のガソリン売上げシェアに占める都のシェアが7.1％であることを考えれば、国費の７％、2,500億円程度は配分されるべきと考える。また、道路整備にあたっての住民の合意形成プロセスについては、現在の説明会方式以外の住民参加方式も検討していく。

一方、鉄道網は2000年の都営地下鉄12号線の完成により、山手線と併せ、世界の大都市で初めて本格環状鉄道を２本持つことになる。その他、地下鉄南北線・三田線の延伸、多摩都市モノレール、東京臨海高速鉄道、常磐新線などの整備が進展している。また、京浜急行が本年11月から羽田空港ターミナルまで乗り入れることにより、都営浅草線、京成線を経由して羽田～成田が乗り換えなしに鉄道で移動できることとなった。このように、鉄道はほぼ成熟化しつつあるが、道路整備はまだ途上である。

PFI推進に向けて

基盤整備の推進方式としてPFI（Private Finance Initiative）の導入が注目されているが、都としてはPFI推進のためには

PFIを公共事業費配分を削減する理由付けにしないこと、
起債による事業よりもコスト面で有利となること、
建設・管理・運営の全体を捉え、行財政改革につながる事業とするためのルールがあること、

懇談

経団連側：: 未整備の都市インフラであり、都市機能の更新に資する都市計画道路の整備に特に注力すべきである。具体的な整備方針を明らかにする必要がある。
東京都側：: 10年後には日中の自動車の平均速度を時速25km/h、20年後には30km/hにしたい。その結果、20年間に得られる経済効果は60兆円に達すると試算される。

くりっぷ No.83 目次／日本語のホームページへ