第599回理事会/7月21日
理事会では、さる6月22日に発足した金融監督庁の日野長官より今後の金融検査・監督行政等について説明を聞いた。
以下の5点を柱として、金融監督庁の運営にあたることとしている。
第1は、明確なルールに基づく公正で透明な金融監督の確立である。自己責任原則の徹底と市場規律の重視を基本として、裁量的なもの、不透明なものを極力排除し、金融監督を行なう。金融監督庁が責任をもって監督すべき範囲を明確にし、その範囲内において、検査やモニタリングから得られる情報と明確なルールに基づいて公正で透明な監督を行なう必要がある。
第2は、厳正で実効性ある検査の実施とモニタリングの充実である。これは事前指導型行政から事後チェック重視型行政への転換の大前提である。金融の新しい流れに即応して検査・監視手法の不断の見直し、向上を図る必要がある。また、金融監督の国際的潮流をも踏まえ、オンサイトの検査に加え、オフサイトのモニタリングの充実にも努めなければならない。
第3は、海外の金融検査監督当局等との連携強化である。金融取引のグローバル化に適切に対応するため、バーゼル委員会や証券監督者国際機構等における議論に主体的に参画するとともに、海外当局との間の情報交換の枠組み整備にも努めていきたい。また、金融犯罪の防止に向けた国際的な取組みに積極的に貢献していきたい。
第4は、専門性の向上と高いモラルの保持である。金融行政に対する内外の信頼を回復するためにも、金融監督庁を専門性の高い行政機関とする必要がある。そのために、職員の専門能力向上のための研修、服務監察を含めた高いモラル保持のための方策に真剣に取り組んでいきたい。
第5は、検査・監視・監督体制の計画的な整備である。職員数、機構の両面を充実する必要がある。体制不備が金融システムの安定性に対する懸念の一因とならないようにしたい。
以上が5つの柱であるが、当面の最重要課題は金融機関の不良債権問題の解決である。金融監督庁としても、不良債権の早期処理に向け適切に対応していきたい。
長官、次長の下に官房、検査部、監督部、さらにその下に10課が設置されている。これに証券取引等監視委員会を併せて総勢403名で構成されている。検査要員として、検査部に検査官151名を含む165名、財務局に検査官420名を含む456名を配置するなど、検査・監視・監督要員は総勢約1,500名となっている。なお、民間からの人材登用として、5名の有識者に非常勤の顧問を委嘱したほか、公認会計士5名を検査官に、商法学者1名を検査部の非常勤の参事に登用した。また、大蔵省以外の省庁との人事交流として、13省庁から30名程度を受入れている。以上のように幅広い分野からの人材確保に配意している。
政府・与党金融再生トータルプラン推進協議会では、6月23日に土地・債権の流動化と土地の有効利用等を中心とする施策をトータルプランの第1次とりまとめとして発表した。さらに、7月2日には、第2次とりまとめとして、
全金融機関の従来基準による公表不良債権額は昨年3月期の27.9兆円から本年3月期は25.0兆円へと着実に減少している。なお、新基準によるリスク管理債権額は本年3月期で35.2兆円となっているが、昨年度、各金融機関が従来より積極的に不良債権を処理した結果、債権償却特別勘定残高は昨年3月期の12.3兆円から本年3月期の19.0兆円へと大幅に増加した。
本年3月期の自己査定の結果は、全国銀行合計でII分類が65.8兆円、III分類が6.1兆円となった(IV分類はすべて償却・引当が行なわれているため含まれていない)。本年1月の集計(II分類65.0兆円、III分類8.7兆円、IV分類2.7兆円)と比較しても、不良債権の処理は着実に進んでいる。
コンピュータのプログラム等が西暦2000年以降の日付に対応するように作られていないため、システムが正常に機能しなくなる問題がある。今日、コンピュータは幅広く活用されており、重大な影響が懸念される。国際的にも、この問題への対応の必要性に対する認識が強まっている。
2000年問題への対応は、金融機関の経営上、極めて重要な課題であり、残された時間は短いため、トップ自ら問題意識を持って、必要な体制整備を進め、確実に対応していただきたい。また、2000年問題に対する取組み状況等について積極的なディスクロージャーに努めていくことは、各金融機関に対する国内外での信頼確保のためにも重要である。金融監督庁としても、実態把握のため、先般、各金融機関に対応状況の報告を求めたところであり、今後も四半期毎に報告を求めていく。また、あらゆる機会を捉えて2000年問題に関する情報提供、意見交換を行なっていきたい。