経団連くりっぷ No.84 (1998年8月27日)

与謝野通産大臣との懇談会/8月5日

新内閣発足を受け、与謝野通産大臣と懇談


7月30日の小渕新内閣発足を受け、経団連はじめ経済4団体では、与謝野通産大臣との懇談会を開催し、当面の重要施策をめぐり懇談した。通産省側からは、与謝野大臣のほか、高市、保坂両政務次官はじめ幹部が、経済4団体側からは、今井経団連会長、稲葉日本商工会議所会頭、根本日本経営者団体連盟会長、牛尾経済同友会代表幹事はじめ各団体幹部が出席した。

  1. 与謝野通産大臣挨拶要旨
    1. 通産省として、経済構造改革に取り組んでいるところであるが、これを加速化することによって、高コスト構造を是正し、わが国の投資基盤を国際水準並みにしていきたい。
    2. 減税については、個人所得課税4兆円、法人課税3兆円という形がはっきりしてきた。個人所得課税の最高税率を65%から50%に引き下げる。法人課税については、1年で国際水準並みに引下げる。
    3. 中小企業政策は、通産省の政策の柱のひとつである。あらゆる政策手段を駆使して、意図せざる危機に中小企業が直面することがないよう全力を尽くす。

  2. 経済団体側発言要旨
    1. 稲葉日商会頭
      1. 中小企業の景況感は極めて厳しい。景気対策に全力を挙げてほしい。
      2. 減税財源の確保に名を借りた、いかなる増税も行なうべきでない。また、外形標準課税の導入には反対である。
      3. 中小企業対策予算の拡充に配慮願いたい。また、中小企業への貸し渋り対策として、中小企業信用補完制度を抜本的に拡充・強化するとともに、小企業等経営改善資金融資等の各種制度融資を一層拡充されたい。
      4. 地域経済に配慮した経済対策を執行されたい。

    2. 根本日経連会長
      1. 臨時国会の70日間に日本の命運がかかっている。重要法案を速やかに成立させてほしい。
      2. 政府の施策を国民にわかりやすく説明すべきである。
      3. 失業要因に応じた対策が必要である。また、政府は、2010年までに740万人の新規雇用を創出する計画を打ち出しているが、半分を今世紀中に、残り半分を2005年までに創出すべく、環境整備を進めるべきである。
      4. 国民生活の質的向上のためには、高コスト構造を是正し、実質可処分所得を増やす必要がある。

    3. 牛尾同友会代表幹事
      1. 景気回復に向け、民間需要を喚起するとともに、企業の供給力を強化する必要がある。また、経済が活性化するよう諸制度を切り換える必要がある。さらに、構造改革に逆行しない景気対策を行なうべきである。特に公共事業については、都市型、消費者型にシフトすべきである。
      2. できるだけ早期に制度減税を実現すべきである。また、連結納税制度の導入に関する具体的な検討を進めるとともに、ストックオプション税制を拡充する必要がある。さらに、株価引上げのため、法人税減税に加え、配当の二重課税を廃止すべきである。
        赤字法人の増加原因を調査すべきである。
      3. 規制撤廃のトーンがダウンしている。規制は原則撤廃し、残す場合は理由を明確にすべきである。
      4. アジアの経済危機は日本の景気と連動している。内向きの対策に終始すべきでない。

    4. 今井経団連会長
      1. 金融再生関連法案を早期に成立させる必要がある。
      2. 持合株式の交換制度を導入すべきである。
      3. 来年度予算の編成にあたっては、景気回復に資する分野に配慮する必要がある。新産業の育成、高コスト構造の是正、産業の活性化につながる分野に重点配分すべきである。さらに、10兆円の補正予算を来年の1〜3月に執行し、来年度予算と合わせて15カ月切れ目ない景気対策を講ずるべきである。

  3. 与謝野大臣発言要旨
    1. 法人税減税については、レベニュー・ニュートラルではなく、実質減税を主張していくし、その方向に進んでいる。外形標準課税については、当面導入しないようにしたい。また、連結納税制度の導入に向けて引き続き努力したい。
      赤字法人の増加原因については、早速調査する。
    2. 追加補正予算ならびに来年度予算において中小企業関係予算を十分確保できるよう努力する。
      中小企業への貸し渋り対策としては、政府系金融機関に必要な資金量を確保するとともに、融資担当者の考え方を弾力化すること、さらには信用保証協会の機能強化が必要である。
    3. 金融再生関連法案については、野党とも十分協議しながら審議を進める。
      今臨時国会においては、与野党とも、日本経済を混乱させないよう責任を果たす必要がある。国会運営にあたっては、野党ならびに国民の理解を得ることが重要である。
    4. 新事業・新産業を創出することによって雇用機会を拡大するのが本来の姿である。また、政府の計画を例えば2005年に前倒しするなど、現在の雇用不安に迅速に対応しなければならない。
    5. 公共事業については、投資効果が十分期待できる分野に資本を投下する必要がある。
    6. 株価については、まず株主を大切にすることが重要である。それが個人株主を市場に呼び戻すための必要条件でもある。
    7. 日本はアジア地域におけるリーディング・カントリーであるという意識を持って各国と接する必要がある。アジア経済の立ち直りは日本にとっても重要であり、経済外交に力を入れたい。

  4. その他
  5. 以上の他、経済界側出席者より、タイムスケジュールを明示したスピーディな政策の展開、住宅等の政策減税の実施、情報通信関連予算の拡充等について要望があった。


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