経団連くりっぷ No.84 (1998年8月27日)

中国委員会(委員長 関本忠弘氏)/7月27日

日中関係の現状と将来展望


新しく6月末に中国大使に就任した陳健氏を招き、中日関係の現状、および中国経済情勢について聞いた。以下は同大使の発言要旨である。

  1. 中日関係について
  2. 今年秋、江沢民国家主席が日本を公式訪問する。中国の国家元首が日本を公式訪問するのは史上初めてのことであり、中日両国が協力して21世紀の中日関係の長期安定成長のフレームを築かなければならない。
    経済のグローバル化は各国に利益をもたらすだけでなく大きなリスクをももたらす可能性がある。中国は世界最大の発展途上国であり、日本は世界第二の経済大国である。アジア経済に大きな影響力を持つ中日両国は、今後、金融不安を防止・克服する上で一層、協力する必要があるし、その可能性も大きい。
    経済問題は国家間の関係の重要な基礎である。改革開放以来、中日両国の経済貿易協力は大きく発展し、それが双方に重要な利益をもたらしている。中日両国の経済発展の段階は異なっているが、いずれも金融改革、構造改革等の問題に直面している。改革の過程においては、中国は日本の経験・手法を参考にしたい。これは日中経済協力の内容を一層豊かなものにするだろう。
    われわれは、アジア金融危機や日本経済の低迷によって、中日間の貿易・投資が減退することを懸念している。私は中国経済の将来性、中国市場の潜在力が必ず皆さんにより多くの「見返り」をもたらすと信じている。

  3. 中国の経済情勢について
  4. 現在、中国経済は経済成長と構造調整とという二重の課題に直面している。こうした中、政府は8%成長の確保と今後3年間で金融・国有企業・行政の三大改革を完成させることを決定した。高い経済成長によって改革が実行しやすい環境を創り出し、21世紀の持続的成長の基礎を固めるその目的である。
    アジア経済危機が発生し、輸出が厳しい状況に直面している中、政府は内需によって成長を推進することを重視している。すでに財政、通貨面で景気対策を実施しており、目標の8%成長を実現する見込みである。また、サービス分野を中心に対外開放を行ない、外資による対中直接投資を促進させる新たな政策を実施する。
    中国政府が重ねて人民元の切り下げをしないとコミットしたことは、中国自身の必要からであり、また、新たな金融不安を引き起こすことを防ぐためでもある。しかし、こうしたメリットの反面、大きな代価も払っており、円安の進行が人民元と香港ドルにさらに大きな圧力を与えている。
    日本経済の規模は東アジア諸国の2倍に相当する。アジアの金融情勢を安定させる上で、他の国ではできない重要な役割を日本が果たされるよう期待している。


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