経団連くりっぷ No.84 (1998年8月27日)

OECD諮問委員会(委員長代行 塩谷憲司氏)/7月23日

情報通信・科学技術等に関するOECDの取組み

−根津OECD科学技術政策局長との懇談会を開催


一時帰国した根津OECD科学技術政策局長を迎えて、情報通信・科学技術等に関するOECDの取組みについて説明を聞くとともに、種々懇談した。根津局長は、電子商取引について、税、プライバシー保護、消費者保護等に関するルールづくりを目指し、10月のオタワ会議に向けて検討を進めていると述べた。

  1. 電子商取引
  2. 経済発展に不可欠な戦略的技術要素として、電子商取引が各国の注目を集めているが、供給サイドでの電気通信網の整備(特に競争の促進や接続の円滑化)に加え、需要サイドに解決すべき多くの問題が存在する。そこでOECDでは、以下の問題を中心に、98年10月の「電子商取引に関するオタワ会議」に向け検討している。


    1. ソフトウェア、データベースなどデジタル化された商品のインターネット上での取引に間接税を課すのは技術的に不可能に近いが、租税当局にとってはこうした取引が課税対象から外れるのは大問題である。さらに国境を越える取引の場合、課税権がどこの国に属するかという問題も生ずる。

    2. プライバシー保護
      欧州委員会は、プライバシー保護が不十分な国にEU企業が個人情報を流すことを禁止する指令を定めており、加盟国は98年までに体制の整備を義務づけられている。米国は産業界の自主規制に委ねる方針をとっているが、思うように進まないため、政府と産業界との間で緊張が高まっている。日本は他国に比べてこの問題への対応が遅れており、EUとのビジネスに支障が出ることが懸念される。

    3. 消費者保護
      オンライン取引に際し、商品や請求金額の誤りが生じた場合の消費者保護制度について、グローバルなルール作りを検討している。オタワ会議では、最低限、オフライン取引と同じレベルの保護がオンライン取引でも与えられるべきことを確認する方針である。

  3. コーポレート・ガバナンス
  4. バブル崩壊後の日本や、最近のアジア経済のトラブルの共通要因として、コーポレート・ガバナンスの欠如が浮かび上がっている。OECDでは、社外重役の義務づけ、監査役の機能強化、ディスクロージャーの徹底、役員給与の見直し等いくつかの問題について、具体的に分析していく。

  5. 産業政策
  6. OECD諸国で個別業種対策の政策がなくなりつつあるなか、ビジネスのダイナミズムを発揮させる新しい産業政策のあり方が問われている。同時に、グローバル化に伴い産業政策の質自体がグローバルな競争にさらされている。OECDで各国の動きをぶつけ合い、互いに改革を加速していきたい。


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