経団連くりっぷ No.84 (1998年8月27日)

PFI推進部会(部会長 鈴木誠之氏)/7月28日

日本版PFIの推進に向けた諸課題について懇談


PFI推進部会では、日本版PFIの推進に向けて、解決すべき課題や必要な環境整備等に関する検討を行なっており、その一環として、7月28日、日本総合研究所の宮脇主席研究員から「日本版PFIの推進に向けた諸課題」について、さらに自治省大臣官房企画室の満田理事官から「PFIに対する自治省の取組み」について、説明を聞くともに、意見交換を行なった。

  1. 宮脇主席研究員説明要旨
    1. 地方自治体の取組みの重要性
    2. PFI制度の実施主体として地方自治体が中心的な存在となることが予想される。PFI推進のためには、従来型の一般公共事業や第三セクター方式、土地信託制度等との違いを明らかにし、PFI制度の導入による地方自治体のメリットを明確化することが必要である。
      地方自治体が取り組みやすいPFI事業として、リース方式による庁舎建て替え建設が挙げられる。その理由として、庁舎建設は、

      1. 老朽化が進んでいることから、官側のニーズも高いうえに、財政危機のなかで巨額のイニシャルコストを負担しないですむ、
      2. 現行制度上、一般単独事業債しか利用できず、補助金制度からの恩恵が小さい、
      3. 庁舎は地域の中心部に位置している建築物で、複合施設の建設等投資インセンティブが確保しやすい、
      4. 事業規模がPFIのリスク管理に適している場合が多い、
      等の点が指摘できる。他方、
      1. 法人税等のコストが発生する、
      2. リース料の形で経常経費の拡大をもたらす、
      3. 地方債発行による資金調達方式との差異が不明確な場合が多い、
      等、PFI事業で行なう場合の問題点、制約要因もある。
      そのほか、地方自治体の関心が高いPFI事業には、病院、福祉施設、公営住宅などがある。
      PFI推進法案に盛り込まれた「民間資金等活用事業推進委員会」は、地方自治体が行なう事業を調査審議の対象としていない。地方自治体が行なうPFI事業の評価機関を設置する必要があるのではないか。

    3. PFI推進にあたっての課題
    4. PFIを推進するにあたっては、次のような法制度上・財政制度上の制約など解決すべき課題が数多くある。

      1. 現時点では、PFI制度を活用した場合の補助金や地方交付税への影響が明らかでない。PFIの実施によって、補助金や地方交付税が減額されることのないよう、中立的な仕組みにする必要がある。
      2. リース方式など分割払い方式によるPFI事業と、地方債発行による資金調達方式との違いをどう明確化していくか。
      3. 官側の支出は予算段階で議決を経ていなければならないことから、リスクが顕在化した場合の対応など、内部法規範としての「予算」とPFI事業にかかわる民間事業者との「契約」との関係を詰める必要がある。
      4. 公有財産のうち行政財産の利用には、地方自治法上厳しい制約があることから、普通財産と行政財産の区分を含め規制を見直すことが必要である。
      5. 民間側がデフォルトした場合の行政サービスの継続性をいかに確保していくか。
      6. ごみ処理施設事業におけるごみの最低限発生量など、最低保証事項をいかに設定していくか。
      7. 計画責任をどう明確化していくか。
      8. 民間事業者との間でPFI事業の契約を締結するにあたって、どの段階で地方議会に説明を行ない承認を得るのか。また地域調整をいつの段階で行なうべきか。
      9. PFI事業では、一般競争入札がすべての場合において望ましいとは限らないと考えられる。随意契約の是非を検討する必要がある。
      10. 地方自治体サイドにおいて、将来的に、企業会計的な会計制度の導入が必要である。

      これら解決すべき制度上の問題について今後、ひとつずつつめ、環境整備を進めていく必要がある。

    5. 懇 談
    6. 経団連側:
      わが国においてPFI事業はどの程度定着すると考えるか。

      宮脇主席研究員:
      解決すべき課題は多いが、行政サービスを受ける住民の立場から見れば、ニーズは高いと考える。公共事業が広範囲に及ぶだけに、制度設計をうまくやれば、公共事業の1割程度まで定着するのではないか。

  2. 満田理事官説明要旨
  3. PFI推進法案に盛り込まれている支援措置は、選択可能な支援措置であって、それらすべての支援措置が各プロジェクトに適用されるわけではない。PFIの事業特性に応じて吟味する必要がある。
    地方自治体から、

    1. PFI事業を活用するメリットは何か、
    2. PFIで行なった場合、財政支援措置はどうなるのか、
    等についての問い合わせを多く受けている。ごみ処理施設や公共交通の整備など、新規事業の需要があるにもかかわらず、財政事情が厳しい場合などにPFIの可能性があるのではないか。補助金等国からの財政支援措置については、現段階では、具体的に何も決まっていないが、今後、各省との間で話し合っていきたい。
    今後の課題として、PFI事業の円滑な推進のため、PFIに係る契約のあり方についてつめる必要がある。PFI事業の遂行にあたって、維持管理、運営のレベル等について細かく取り決めることが求められよう。第1段階として、最低限必要なリスク分担項目を示すなど、契約型社会の発想でPFI事業の進め方について検討を進め、分野毎によい事例を積み重ねていく必要がある。
    地方自治体がプロジェクト・ファイナンスのノウハウを身につけることも課題である。
    また、PFIで実施した鉄道やバス事業が仮に破綻し、別途事業者を探さなければならない場合、当初、関係省庁から得た許認可の扱いがどうなるかといった問題もあろう。

    経団連側意見
    地方自治体におけるPFI事業促進のため、まず、自治省がPFI事業に関するガイドラインを作成すべき。特に、「Value for Money」の計測について、自治省としての考え方を提示すべき。
    プロジェクト・ファイナンスを取り入れる意味からも、地方自治体の会計制度を改めるべき。

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