経団連くりっぷ No.84 (1998年8月27日)

土地・住宅部会(部会長 田中国土・住宅政策委員会共同委員長)/7月15日

土地・住宅政策の理念を捉え直す

−土地・住宅、都市開発に関する政策のあり方の検討を開始


国土・住宅政策委員会では、土地の流動化・有効利用、都市機能の更新、質の高い住宅建設の促進を進めるべく必要な施策の検討を行なっている。これらの施策のあり方について、政策の基本理念にまで立ち返って検討を進めるべく、各業界の役員・部長クラスからなる土地・住宅部会を新設した。第1回会合では土地・住宅問題の現状と課題について意見交換を行なった。委員からは、土地・住宅政策の基本理念、国土政策における都市の位置付けなどを確立すべき等の意見が出された。

  1. 土地・住宅政策の基本理念
  2. 土地・住宅政策の基本理念について、土地政策の経済政策としての側面を重視すべき、土地基本法の理念である「土地利用の公共性」を再確認する必要がある、国民に生存権(健康で文化的な最低限度の生活)を保障するための施策から幸福追求権を保障するための施策へ住宅政策の重点をシフトすべき、土地政策と住宅政策との関わりを整理した方が良い、制限的施策ではなく誘導的施策を充実すべき、都市機能更新における官民の役割分担・公の位置付けを明確にすべきといった意見が出された。

  3. 都市のあり方、都市計画のあり方
  4. 都市のあり方については、職住分離の機能都市政策から、職住バランスのとれた総合都市政策へ転換すべき、まちづくりのあり方にもっと焦点を当ててはどうか、土地の細分化を防ぐべきだ、市街地再開発やマンションの建替えのインセンティブが乏しい、土地収用法を適正に活用することが必要、東京圏としての都市の全体構想を打ち出すべき、公共投資の配分を見直して都市部により多く振り向けてはどうか、といった意見が出された。

  5. 住宅政策の充実
  6. 住宅政策については、高齢化、少子化に対応し、広くて質の高い住宅への誘導を図るべき、住宅関連コスト、とりわけ住宅取得に係る税制の改革を行なうことが必要、持家需要の落ち込みは深刻、ファミリー向けの借家が少ない、定期借家権の導入を早期に実現すべき、持家重視か借家重視かを整理すべき、都市の状況に適応しない住宅付置義務などを過重な負担を課する自治体の行き過ぎた開発指導要綱は問題、住宅にも基本法が必要ではないか、といった意見が出された。

  7. 当面の問題への対応
  8. 一方、委員からは内需拡大の牽引役として、住宅建設の促進、土地・住宅政策の充実に期待する声も出された。緊急経済対策、金融再生トータルプランに盛り込まれた事項の早期実施、リストラに伴う工場等の跡地利用にかかる規制の緩和、バブル期の住宅ローンの負担問題の解決、内需拡大に向けた住宅税制の改革、SPC法の拡充など不動産の証券化の推進などを求める発言もあった。


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