経団連くりっぷ No.85 (1998年9月10日)

なびげーたー

PFIに期待する

産業本部長 永松恵一


PFI推進法案の成立をまたずに、PFIの推進に向けての政府の動きが急である。経済界としても、構造改革の一環としてPFIの推進を働きかけていきたい。

さる5月に国会提出されたPFI推進法案は今臨時国会への継続審査となったが、法案の成立を前に関係省庁からPFIの推進に向け来年度予算への概算要求が出揃い、必要な税制措置が要望されている。また本年11月を目途にPFI推進に係わる基本的事項をまとめるべく、経企庁内にPFI推進研究会(会長:樋口廣太郎アサヒビール会長)が発足した。

1992年、英国に登場したPFIは、民間主導で効率的、効果的な社会資本整備を行なうものとして一定の成果をおさめている。現在では、英国の公的資本形成の1割以上をPFIが占めている。PFIはわが国においても官民の責任分担の明確化といった実施にあたっての前提がきちんと守られる限り、大きな成果が期待できよう。民間の資金と経営ノウハウを併せて導入することにより着実かつ効率的に社会資本整備が進められるし、民間事業者の創意工夫により国民がより良質な公的サービスを受けることにもつながる。また、「民でできることは民でやる」ことが、民間のビジネス領域の拡大と経済活性化をもたらし、ひいては政府を小さなものとする。少子・高齢化による国民負担率の増大が確実に見込まれる中、小さな政府の実現に向けた取組みはわが国にとって必要不可欠であり、中長期的にみて、PFIは経済の構造改革を進める上で一つの柱となる政策である。

今般、国土・住宅政策委員会で実施したアンケート調査においても、回答企業の95%が「今後、わが国もPFIの導入を進めていくべき」と回答している。さらに約7割が「将来的に手がける可能性がある事業分野を有する」として、廃棄物処理・発電、庁舎・宿舎等、さまざまな分野をあげるなど、企業のPFIに対する期待度は高い。

もちろん、今後PFIを推進していくにあたっては、透明性、客観性、競争性に配慮した公平・透明な手続を確保する、官の関与ならびに公的規制を必要最小限にするといった条件整備が不可欠である。中でも、PFI事業を選定する際の評価基準として、英国のPFIでとられているところの「Value For Money」というコンセプト、すなわち「一定の支払に対し、最も価値の高いサービスを提供する」という考え方が徹底されなければならないであろう。さらには、これまでの民活事業、第三セクター方式の反省を活かすべく、PFI事業の民間主導の運営はもちろんのこと、事業実施前に契約・協定によって責任・リスク等に係わる官民の役割分担を明確化しておくことが欠くことのできない前提条件である。

国土・住宅政策委員会では、近くPFIに対する基本的な考え方ならびに今後の課題について見解を取りまとめ、PFIの推進を関係方面に働きかけていく。


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