経団連くりっぷ No.85 (1998年9月10日)

日タイ貿易経済委員会/7月28日

新委員長に草道日商岩井社長が就任

−1998年度定時総会を開催


日タイ貿易経済委員会は7月28日、98年度定時総会を開催し、97年度事業報告・収支決算および98年度事業計画・収支予算を原案通り承認するとともに、役員改選を行ない、94年より4年間委員長を務めた瀬谷旭硝子会長にかわり、草道日商岩井社長を新委員長に選出した。また、当日は、チャワット・アタユク駐日タイ大使から「経済危機の克服に向けて−タイの努力と日本の役割」と題する説明を聞いた。

  1. 今回の危機に対する所見
    1. 今回の通貨・金融危機は、特定の国だけに起こったものではないので、地域レベルのみならず国際的な枠組みの中での対処が必要となった。この点を欧米諸国はしっかりと認識すべきである。国際通貨基金(IMF)による対タイ支援に加わらなかったことで、米国に対する批判は高まった。

    2. タイの関係当局が危機の深刻さに鈍感であったことも否定できない。輸出の伸びの鈍化や民間債務の増大に対し、タイ政府はもう少し早い段階で対処すべきであった。また、バーツ防衛のために外貨準備を使ったことは、結果として間違いであった。総じて言えば、危機に対して抜本的な対策を迅速に取る必要があった時に、政治的な決断が行なわれなかった。

  2. 危機克服のためのポイント
    1. タイ経済を早期に回復軌道に戻すためには、何よりも、IMFの指導にしたがう必要がある。チュアン内閣のもとで、IMFの指導に基づく経済対策を実施するための政治的決断は行ないやすくなった。しかしながら、失業率のアップなどマイナスの影響があることにも留意しなければならない。

    2. 危機克服のため、まずは金融システムの再建および金融セクターの改革が必要である。これまでにタイ政府は56のノンバンクを閉鎖し、その資産を処分した。また、今後10年間、外資が金融機関の株式を100%保有することを認めて、外資の導入を図るとともに金融のノウハウや経営手法も導入したいと考えている。いずれにしても、流動性不足への対応が喫緊の課題である。

    3. 輸出の増大も図る必要がある。バーツ安という状況にもかかわらず、近隣諸国の通貨安もあり、輸出は当初予測したよりも伸びていない。主要な輸出先への輸出も伸びておらず、本年第1四半期の対日輸出も、対前年比で16%減っている。

  3. 日本の役割
  4. 今回の危機に関し、日本は当初から、積極的にタイ支援にコミットした。現在、タイ政府が行なっている産業構造改革にも積極的に協力してもらっており、大変感謝している。今後も、(1)投資の継続、(2)タイ製品のアブソーバー的役割の強化、という点で一層の協力をお願いしたい。日本の経済状況も芳しくないことはよく理解しているが、それでも日本市場がタイ製品を輸入できる余地はまだ十分にあると思う。


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