国土・住宅政策委員会/8月4日
昨年2月の『新総合土地政策推進要綱』の策定以来、緊急経済対策を含め、土地の有効利用、それに向けた流動化の促進に向けた新しい土地・住宅政策が相次いで打ち出された。国土・住宅政策委員会(委員長:古川昌彦氏、共同委員長:田中順一郎氏、今村治輔氏)では、建設省の小川総務審議官、木下建設経済局長、山本都市局長、那珂住宅局長、内田官房政策課長を招き、これら新政策の進展状況と今後の課題について説明を聞くとともに、懇談した。
公共事業については、GDP比が欧米の2〜3倍もある、手法が非効率・不透明、地方偏重であり経済効果が疑問、といった懸念の声がある。規模の問題、地方の問題は国民の政治選択の問題であるが、公共事業の効率性、透明性、客観性については、政府は徹底的に追求していく。建設省は予算の重点事項への配分、公共工事のコスト縮減、事業箇所の重点化、事業連携の推進を進めるとともに、事業評価システムの本格的導入、積極的情報公開を行ない、住民等の意見も踏まえ双方向の行政を目指す。
金融再生トータルプランは、80数兆円ともいわれる金融機関等の不良債権と、都区部に約5,000haあるという遊休未利用地とが互いに絡まりあって、身動きできない状況にあることから、権利関係の整序とともに、土地の整形・集約化と都市再開発を進めるというものである。建設省では都市再開発を積極的に後押しする。住宅・都市整備公団に設置した「土地有効利用事業推進本部」には、すでに約800件の情報が集められており、精査の上、土地の整形・集約化、再開発を行なう。また民間都市開発推進機構に「再開発・土地有効利用支援センター」を設け、民間事業者への情報提供、助言等を行なう。
建設省では今年5月に『日本版PFIのガイドライン』を発表し、同月「建設省PFI推進会議」ならびにPFI相談窓口を設置した。建設省としては、小さな政府論とは別に、与えられた財政資金を有効に活用する手法として、PFIの基本理念である「Value For Money」を高めるような事業推進の仕組みをつくりたい。現在、再開発にあたって公共施設と民間施設との一体的な整備を試みたり、プロジェクトファイナンスが成立しうる環境整備や国有財産法等法制上の課題について検討したりしている。
都市政策は新都市づくりから既成市街地の再構築へとシフトしており、土地の有効・高度利用のための施策も、都市機能を更新し、安全、環境、福祉といった要素を取り入れた都市づくりの中での土地利用のあり方の見直しの一環として取り組まれている。緊急経済対策に盛り込まれた都心居住の推進、土地の有効・高度利用の推進、市街化調整区域の計画的土地利用の推進などについては所要の法律改正等がそれぞれ成立した。規制の緩和・合理化についても建築基準法を改正し、建築確認・検査の民間開放や建築基準の性能規定化、連担建築物設計制度の創設等の措置を講じた。今後は定期借家権の導入などに取り組む必要がある。
昨年度の新規住宅着工は、134万戸で96年度比17.7%減となった。着工戸数減少の要因として、短期的には消費税引き上げに伴う駆け込みの反動、低金利等を背景とした需要先食いなどが挙げられるが、長期的構造的要因としては安定的な経済成長社会への変化、少子化の進展による世帯数増の減少などが挙げられる。こうした情勢を踏まえ、中古住宅市場の整備、リフォーム市場の育成など、良質な住宅ストックの形成を目指した新たな施策を展開したい。
現在、経済波及効果の大きい住宅政策の拡充が望まれている。建設省としてもリフォーム市場、中古市場の発展に資する税制改正を行ないたいと考えている。また住宅投資の促進のための税制について幅広く検討する必要があるが、現在、住宅取得者の年収別分布を見ると、年収700万円までの層が過半を超えており、諸外国と比べても比較的所得の低い層の持家取得が多いことが特徴となっている。米国型のローン利子の所得控除制度は高所得者層の投資を促進するが、わが国の住宅取得の傾向から見ると現行の税額控除による住宅取得促進税制を同時に拡充強化しないとマクロ的な効果は出ないといえる。減税規模に応じた最も効果の大きい措置を講じることとしたい。
住宅・都市整備に円滑な資金供給を確保するためには、証券化によって市場から直接資金調達する道を広げることが不可欠である。証券化の推進により、不動産業がこれまでのように地価上昇に依存する経営だけではなく、ストックを活かしたフィービジネスの拡大などを展開できるようになる。
不動産特定共同事業法もより使いやすいものにしていくよう検討していきたい。