経団連くりっぷ No.85 (1998年9月10日)

日本・インドネシア経済委員会(委員長 中村裕一氏)/7月27日

ハビビ政権下のインドネシアの現状と課題

−1998年度総会を開催


深刻な経済危機に直面しているインドネシアでは、ハビビ政権下、各種改革が進められている。こうした状況を踏まえ、経済界として、今後、いかなる対応をとるべきかが大きな課題となっている。この度、日本・インドネシア経済委員会の1998年度総会を開催し、外務省アジア局の藪中三十二(みとじ)審議官から、インドネシアの現状と課題について説明を受けた。また当日は、委員会の97年度事業報告・収支決算、98年度事業計画・収支予算につき審議し、了承を得た。

藪中審議官説明要旨

  1. 日本にとりインドネシアは極めて重要な国である。アジアに対する日本の直接投資累計額(51〜96年度)およびODA供与累計額の中で、インドネシア向けは第1位となっている。日本にとって重要性をもつ石油輸入のライフ・ラインはインドネシア周辺を通っている。日本の国際政治における発言力は、日本と協力関係が深いASEANの発展とともに高まってきたが、ASEAN形成にインドネシアは大きな役割を果たしてきた。

  2. 98年5月にジャカルタで暴動が発生したとき、華人が襲撃の対象となった。華人は、インドネシアの人口の3〜4%しか占めないのに対し、約7割の資産を保持していると言われてきた。華人資本は海外に逃避し、華人によって支えられていた流通システムは壊滅的な打撃を受けた。

  3. 日本政府は98年6月に外務省、大蔵省、農水省、通産省の4省庁からなるミッションをインドネシアに派遣した。暴動発生後のジャカルタは惨澹たる状況にあり、インドネシア政府関係者からは「企業からの税収が激減し、国庫にはほとんど資金がなくなった」と苦しい状況が伝えられた。失業の増加、インフレの昂進、食糧の不足がさらに進むと、地方における暴動の発生が懸念される。

  4. ハビビ政権は、発足してから2カ月の間に、政治改革を進め、報道の自由化、政治犯の釈放、政治結社の自由化などを進め、ある程度の評価を得ている。
    ハビビ政権にとっての課題は、逃避した華人資本を呼び戻すことである。ハビビ大統領には「イスラムより」というイメージがあるため、多くの華人は神経質になっている。また、今後の政治日程によると、98年11月頃に選挙制度の改正、99年5月頃に総選挙、同年12月頃に新大統領の選出、2000年1月頃に新大統領が就任することになっており、政治改革にやや時間がかかりすぎるとの指摘もある。

  5. 日本政府は、外国に比べて極めて大きい経済協力をインドネシアに対して行なっている。日本政府は、今回のアジア危機に関する支援策として420億ドルの支援を表明している。IMF、世銀、ADBなど国際機関を通じてインドネシアに支援するほか、日本政府による二国間ベースの支援も行なっている。


くりっぷ No.85 目次日本語のホームページ