経団連くりっぷ No.85 (1998年9月10日)

センセンブレナー米国連邦議会下院科学委員長との懇談会(座長 豊田名誉会長)/8月12日

厳しい米国議会の国際熱核融合実験炉(ITER)の評価


経団連では日米欧ロの4極による国際協力プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」の計画推進と日本誘致に取り組んでいる。4極では今年7月に工学設計活動の最終報告書を承認し、併せて3年間の工学設計活動の延長を行なってコスト削減のための設計の変更を行なう予定であったが、米国議会の承認が得られず、協定は失効した。経団連では、来日中のセンセンブレナー下院科学委員長から報告を受けるとともに、懇談した。

  1. センセンブレナー委員長説明
  2. 日米両国は長い間科学技術分野においてパートナーシップを組んできたが、今後もこうした関係を継続していくことが重要である。現在の先端科学分野における国際協力プロジェクトのコストがどんどん大きくなっており、国際的なコストシェアリングは不可欠である。こうした国際協力を進めていく上で注意すべきは、各パートナーの協力の範囲、すなわち各パートナーの義務、得られる利益、義務不履行の場合の補償のあり方などを確定することである。米国はこれまでも国際協力プロジェクトの費用が膨らみ計画を断念した経験がある。国際協力プロジェクトではその各段階において、各パートナーの協力が可能な範囲にあるかどうかを確認することが必要である。
    こうした観点から、米国議会はITERについて、米国の協力可能なコストに比べ今後負うべきリスクが大きすぎると判断している。具体的には、

    1. 92年からこれまでに4極で10億ドルもの投資を行なったのに、いまだに最終的な設計ができていないこと、
    2. サイトの建設予定地が決まっていないこと、
    3. その結果、建設費の割当額もはっきりしないこと、
    といった問題がある。
    もしこのプロジェクトを継続させたいのであれば、92年の合意を見直して、各極の協力のあり方を再確認し、今後、プロジェクトにおいて各極が負うべきリスクの懸念を払拭した上で、新たな協定を結び直すべきである。そうでなければ米国議会は、ITER計画に振り向けていた予算を他の核融合プロジェクトなどに振り向けることになろう。

  3. 意見交換
  4. 経団連側:
    核融合を進めていくことの重要性については日米双方の意見は一致している。核融合炉のうち最も技術的に進んでいるITER計画のトカマク炉に連邦予算を投じることが適切ではないのか。

    センセンブレナー委員長:
    議会では、技術的な優劣について専門家のコンセンサスがないと捉えている。問題は、各極の担当官庁が各極の協力のあり方について包括的な考え方を示さずに、単なる延長協定を結ぼうとしたことである。新しい協力のあり方が示されれば、議会は動かせるはずである。

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