経団連くりっぷ No.86 (1998年9月24日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田事務総長)/9月7日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望を聞く


経団連では、新しく入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する問題や要望を聞き、活動に反映させている。当日は新入会員代表者7名および今井会長、内田事務総長ほか事務局役員5名が出席し、率直な意見交換を行なった。

  1. 今井会長挨拶
  2. 現在の厳しい経済情勢を乗り越えるためには、官民が協力し、叡智を結集して経済社会のシステム改革に取り組んで行く必要がある。個人も企業も「自立、自助、自己責任」の原則に基づいて行動し、徒に政府に頼ることなく、自らが率先して改革を実現していくことが重要だ。経団連は金融システムの安定化をはじめ9項目の提言を取りまとめ、現在、政府および与・野党にその実現方を働きかけている。今後も、重要課題に着実、かつタイムリーに取り組むので、積極的に活動に参加願いたい。

  3. 新入会員代表者発言要旨
    1. 日立総合計画研究所 磯部社長
    2. 現在の経済情勢は過去に類を見ないほど厳しいものがあり、各々が自己責任の哲学で乗り越えねばならない。
      景気回復との兼ね合いで、財革法の一時棚上げはやむを得ないが、長期的な視野で考えると、財政改革の旗印は降ろしてはいけない。
      国際金融の問題に対してはもっと踏み込んだ対応が必要だ。国内経済の建て直しなくして円の国際化は難しい。為替問題では、資本勘定だけでなく貿易勘定の面からも検討していく必要がある。世界中の国々が国際通貨問題について、話し合う機会をつくることも大切である。

    3. 第一生命経済研究所 森社長
    4. 現状においては、今後、失業率の増大が予想されるので、雇用に対する考え方を明確にする必要がある。その一方で規制緩和を推進し新規雇用を創出しながら、職業訓練等の充実策も検討する必要がある。
      また、将来にわたる日本の繁栄のためには、安全保障問題についても、長期的な視野に立って、基本的なスタンスを研究する必要がある。

    5. カンセイ 高木社長
    6. 部品メーカーはかなり東南アジアに進出しており、現在は先行きが見えず四苦八苦している。
      国内の状況も深刻で、現在は何とか雇用確保に努めているが、いつまでこのままの状態を継続できるか心配である。
      貸し渋りの問題も想像以上に深刻で、関係会社の中には大変困った状況に追い込まれ、公庫等の助けを得ながら持ちこたえているところもある。早期の景気回復を期待する。

    7. 東亞医用電子 家次社長
    8. 当社は、診断薬・診断機器市場の中の血液分野を中心に活動している。当業界もビックバンで、海外を中心に、診断から治療までのトータルケアを目指している。
      日本では比較的新しい産業に属しているが、認知度も低く、業界関係の統計整備も十分とは言えない状況にある。
      医療・ヘルスケア分野は、高齢化社会を迎えてこれから大きなウエイトを占めてくると思うが、病院と在宅医療との格差を埋めていく努力が必要と考えている。21世紀には、ヘルスケアを当社のひとつの特徴ある事業に育てたい。

    9. GEキャピタル・エジソン生命保険 石坂社長
    10. エジソン生命の由来は、発明王トーマス・エジソンがGE設立の際の発起人であったことにちなむ。新会社設立にあたり、相互会社から株式会社への転換、欧米と日本のビジネス慣習の違い等の問題に取り組み、思考もストックからフローに転換した。
      現在、生命保険業界は14カ月連続で対前年実績を割る状況が続いており、不振を極めているが、12月からの投資信託業務の解禁と2000年の介護保険の制度化を控え、各社とも新商品の開発を競っている。
      金融システムの安定と現在審議中の関連法案が早く国会を通り、景気回復が軌道に乗ることを期待する。

    11. 財団法人 日本交通公社 今井会長
    12. 事業会社のJTBと混同されることがあるが、当財団は観光分野に専門特化した総合調査研究機関である。
      現在、観光産業の定義は確と定まってはおらず、広義には旅行業、宿泊業、交通機関、飲食業、土産物店、娯楽産業等を含めて、観光産業と称している。消費総額、雇用規模はわが国経済の中でもかなり大きなウエイトを占めており、94年の運輸省調査では、旅行関連消費額が約24兆5,000億円、うち国内関係消費が約20兆円、旅行関連の雇用者はほぼ200万人に達すると言われている。
      地域における観光の経済波及効果は非常に大きなものがあるが、主にハード面に重点がおかれ、ソフト面の取り組み不足が地域の財政を窮乏化させる事態も生じている。さまざまな角度からデータ整備を行ない、行政・企業・住民が一体となって取り組まなければ観光振興は図れない。
      全国的および地域振興の観点から、経団連も取り組んでほしい。

    13. 日本エマソン R・W・スティリー取締役(米国エマソン・エレクトリック社副会長)
    14. エマソン社は、約100年の歴史があり、産業用機器を中心に様々な製品を手がけており、ものづくりに注力した事業展開を行っている。41年間にわたり、継続的に利益が上昇しているという記録を持つが、これは

      1. 製造業においての事業の多角化と、
      2. 各事業部門がそれぞれの業界において高いコスト競争力(best cost producer)、
      を持っていることに起因する。
      日本に進出してから、約40年が経過するが、今後は日本での事業展開に一層力を注ぎたいと考え、アジア・パシフィック本部を今春、香港から東京に移した。
      経団連が規制緩和に熱心に取り組んでいることを評価する。規制緩和は、コストの明確化や変化に対する自由度を得ることができ、世界に通用する競争力を養う上でたいへん重要な要素である。今後は経団連のメンバーとして、日本の製造業の競争力アップに貢献していきたい。


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