経団連くりっぷ No.87 (1998年10月8日)

第31回東北地方経済懇談会/9月24日

改革と自立への挑戦
−新たな発展の基盤の確立と東北地域の経済活性化に向けて


経団連では、東北経済連合会(東経連)との共催により、標記懇談会を仙台市にて開催した。当日は、東経連から明間会長はじめ地元経済人約250名と、経団連から今井会長、伊藤・樋口・古川・前田・鈴木の各副会長が出席し、当面の経済対策、構造改革の推進や社会資本の整備のあり方などについて、種々懇談を行なった。
また、懇談会に先立ち、東北インテリジェント・コスモス構想の高度情報化プロジェクトの一環に位置付けられる通信・放送機構の仙台リサーチセンターを訪問し、光通信の高速化・効率化・長寿命化のための研究開発施設の視察を行なった。

  1. 東経連側発言
    1. 開会挨拶
      明間輝行 会長(東北電力会長)
    2. 東北地方は公共投資の減少、米価の低迷、地元金融機関の破綻の余波が広がり、深刻な状況にある。将来に対する先行き不安感を払拭し、中長期的に日本経済を安定軌道に乗せるためには、抜本的な構造改革を推進するとともに、地域の自立発展のための環境整備が不可欠である。
      東経連では、東北地域の自立発展への道を確かなものとするために新産業創造地域の形成や農業の再活性化、社会資本整備の推進などを積極的に訴えている。また、首都機能移転についても、その必要性を訴えるとともに東北地域への移転を提唱している。東北は全総計画において「21世紀に向け、新しいライフスタイルを展開するフロンティア」と位置付けられており、今後の国土づくりの先導役を果たさなければならない、と決意を新たにしている。

    3. 東北経済の現状と課題
      早川二郎 評議員会副議長(仙台放送会長)
    4. 東北経済の落ち込みの原因の第1は公共投資の2年連続の減少である。特に、平成9年度は、対前年度比9.4%減という状況にある。公共投資のあり方や従来の仕組みについては見直しを行なっていく必要があるが、東北では基礎的社会資本の整備が遅れており、地域の自立ある発展のためには社会資本整備の推進は不可欠である。
      第2は将来に対する不安である。わが国再生に向けた中長期ビジョンの確立により不安感を払拭し、元気な日本をつくることが必要である。また、北東公庫の新銀行への移行に伴い地域開発金融機能が低下するのではないかとの懸念もあり、新銀行には、東北地域に対する資金量の確保、体制の充実を求めたい。

    5. 新しい産業構造の構築に向けて
      大高善兵衛 常任理事(郡山商工会議所会頭)
    6. 東北ベンチャーランド運動は、当初の普及・啓蒙活動から脱皮し、新事業の展開に向け、起業家を支援し、参加者の共同プロジェクトの事業化、企業間リンケージの構築の段階にまで成長した。東北インテリジェント・コスモス構想も14の独創的な研究開発とR&D会社の研究成果の商品化等、着実に成果を収めつつある。
      また、農業・農村の再活性化に向けても提言を行ない、担い手不足や国境を越えた市場競争激化への対応などの新しい産業としての農業の確立などを目指している。
      こうした活動を通じ、21世紀の東北に新しい産業構造を構築していきたい。

    7. 規制緩和の積極的推進
      鈴木彦治 副会長(サンエス会長)
    8. 東経連では、規制緩和に関するアンケート調査を実施した。規制緩和に期待する効果としては、まずは自由競争の促進による市場の効率化、次いで許可に関わる負担軽減、経済の活性化、新規事業機会の創出などが挙げられた。さらに規制緩和によって進出が可能となる新事業分野として、情報通信、次いで医療福祉、流通・物流、環境、都市環境整備などの分野が挙げられており、これらは今後の市場拡大、雇用吸収が期待される分野である。
      今後は、地域自らが産業経済の足腰を強めて自立し、新しい発展を目指していく必要があるが、規制緩和は大きな役割を担うものと考えられる。

    9. 首都機能移転と地方分権の推進
      坪井孚夫 副会長(福島県商工会議所連合会会長)
    10. 地方分権は、地方が自らの創意工夫と自らの責任において、その地域の特性に応じた個性ある地域づくりができるシステムを構築することである。地方の一般財源の確保とともに、受け皿となる市町村の合併による適正規模化、地方の行政改革を積極的に進めるべきである。
      首都機能移転は、国会等の移転によって、官から民へ、国から地方へ、という改革を推進する大きな契機とするものであり、東京をもうひとつつくるということではない。その必要性、目的、歴史的意義と効果を国民の間で議論し、合意の形成を図るとともに、地元住民への理解と協力を求めていくべきである。

    11. 東北開発促進計画と社会資本整備
      佐藤 光 副会長(岩手県商工会議所連合会会長)
    12. 新しい全総計画の具体的な裏付けとなる「東北開発促進計画」が策定されている。東経連では、東北の目指すべき将来像として、

      1. 新しい科学技術と産業の創造、
      2. 自然と共生した豊かな生活文化の創造、
      3. 世界に開かれた広域国際交流の創造、
      の3つを掲げている。求められる社会資本整備としては、東北新幹線の盛岡以北の早期完成、日本海沿岸・三陸・東北中央自動車道等の建設、北海道との連携基盤の強化を掲げたほか、世界へのゲートウェイ機能の整備、リサイクル技術の開発と施設整備の必要性を訴えている。投資の重点化、優先順位の明確化を行ないながら、基礎的社会資本の整備を進め、新しい国土づくりに向けた東北の役割を果たしていきたい。

  2. 経団連側発言
  3. 今井会長が「『自立、自助、自己責任』を活動の基本に据え、直面する重要課題に全力を傾注して取り組む」と口火を切った。これを受けて、前田、伊藤、樋口、鈴木、古川の各副会長が、経済構造、税制、社会保障制度、金融システム、行政、国土構造の改革に向けた課題と経団連の取組み等について発言を行なった。


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