首都機能移転推進委員会(委員長 河野俊二氏)/9月2日
政府の国会等移転審議会では、首都機能移転先候補地の選定に向け、9月から2区分3地域の調査対象地域(北東地域、中央地域<東海地域、三重・畿央地域>)で現地調査を行なっている。首都機能移転推進委員会では、これに先立ち、調査対象地域に位置する経済団体である中部経済連合会の須田寛副会長・21世紀新首都問題特別委員長ならびに東北経済連合会の芳賀滋彌専務理事を招き、首都機能移転の意義、新都市像、東京圏との連携のあり方、両地域の魅力などについて説明を聞き、意見交換を行なった。
首都機能移転は財政構造改革で慎重に検討を進めることとされたことからも分かるように、公共投資としか捉えられていない部分がある。総経費12兆3,000億円という試算は10年以上に分けて使われる額に過ぎないにもかかわらず、巨額のばらまきとの印象を持つ向きもあるようだ。最近では景気対策という捉え方もあるが、首都機能移転は行財政改革の一環として行なわれるべきものであって、景気や財政事情に左右されて凍結されたり促進されたりすべきものではない。議論の出発点は、国地方の役割分担=「地方分権」と官民の役割分担=「規制緩和」とであるべきである。
また東京一極集中を是正し、国土の均衡ある発展を図ることは急務であり、東京への異常な集中に起因する過剰な投資、不効率投資からの脱却のためにも首都機能移転は必要である。もちろんその推進に当たっては、効率的、経済的な方法による移転、国(地方)の諸計画との整合性が必要である。
中央地域の魅力として、地理的に日本の人口重心が当地域に位置し、またすべての国土軸が当地域を通っていること、中部国際空港や東海道・中央新幹線など既存・既計画のインフラを活用し、「グローバルネットワーク都市」を形成しやすいこと、適度な都市集積があり、中部5県の人口密度(390.4人/km2)は全国平均(332.3人/km2)に近いこと、各自治体が独立しつつも連携をとっていること、などが挙げられる。
今年5月には地元の自治体、経済団体により「『中央地域』へ首都機能移転を実現する会」を結成し、移転実現を目指し、活動を進めることを決議した。
中央地域と東京圏との間には交通・通信インフラが整備されており、時間的距離は短いが、地理的には東京圏の外延ではない「つかず離れず」の関係を形成できる。東京圏の再開発によるブラッシュアップは国民的課題だが、新都市は東京圏と連携し、機能分担をすることにより、東京圏の再開発に共に取り組むことができるであろう。
新都市の建設は超長期的な視野に立ち、崇高な理念を掲げ、新しい都市像のみならず、社会像、生活・文化像をも含めた新しい文明のあり方を日本はもとより世界に提示するものでなくてはならない。東経連では、新都市のあり方として、環境共生都市、森林・庭園都市、生活文化都市、国際交流平和都市の4つのコンセプトからなる「環境文化首都」を提案している。環境文化首都を実現することの意義は、
北東地域には、日本の「共生と循環の哲学」により環境文化の理念を実現するのにふさわしい豊かな森と水を有すること、第一国土軸とは別の国土軸(北東国土軸)に位置することから、新都市が建設されれば多軸型構造への改編が進められること、ゆとりのある生活が享受できること、国際・航空ネットワーク等の整備により高い国際性を持てること、活断層が少ないといった安全性を有することといった魅力があり、またこれまで首都が置かれたことがなかったという清新なイメージがある。
東経連では12年前から首都機能の東北移転を提唱し、今年4月には改めて首都機能移転専門委員会で、移転実現に向けて報告書を取りまとめるとともに、『首都移転が日本を救う─地球時代の新しい文明の創造』を出版するなど、積極的に活動している。
東京は新都市建設後も、経済首都、文化学術首都であり続ける。新都市は政治首都、環境文化首都として、東京と相互補完の関係を形成すべきである。