経団連くりっぷ No.88 (1998年10月22日)

リー・シェンロン シンガポール副首相との昼食懇談会/9月29日

アジアを牽引する日本経済


9月29日、来日したリー・シェンロン シンガポール副首相兼通貨庁長官を招き昼食懇談会を開催し、日本経済や東アジア経済をめぐる情勢について懇談した。昼食会に先立ち、アジアに進出している日本企業の直面する問題等に関して主要会員企業幹部との間で意見交換を行なった。以下はリー副首相の発言要旨である。

リー・シェンロン副首相

  1. 日本経済の現状について
  2. アジア地域の繁栄を牽引するのは日本である。日本企業トップと意見交換した印象では、昨年秋頃に比べ将来を悲観視する傾向が強まったと感じる。しかし、日本の高い能力と強い決意をもって問題解決できることは疑いない。できれば早いタイミングで景気回復してもらえれば、というのが率直な意見である。
    日本では、金融機関の破たんに伴う金融システムの混乱を回避するための方策やモラルハザード等が議論されているが、公的資金を注入して金融安定化を図ることはどこの国でもやっていることだ。心配なのは、中途半端な状態が続いて、他の面に悪影響を及ぼすことである。東南アジア諸国も、色々な形で金融システムの問題を抱えているので、日本がどのようにして解決をするのか、われわれは一つのモデルとしてゆくえを見守っている。

  3. 東アジア経済をめぐる情勢
  4. 経団連がアジアに深い関心を持ち、11月にシンガポールを訪問されることを歓迎する。東アジア各国は異なる状況下にあり、取り組みもそれぞれ異なっている。タイや韓国では、IMFのコンディショナリティに従って改革を進めているが、タイは貧困問題、韓国はリストラ問題などの難問に直面している。また、マレーシアは厳しい為替管理政策など、他の国と違うアプローチを取っている。インドネシアは再生の道にまだ至っていない。今はひたすらインドネシア自身による解決に向けた姿勢が重要である。
    シンガポール経済も建国以来最大のチャレンジを迫られている。シンガポール政府は、固定資産税の見直し、公共施設の利用料金や通信コストの低減など、大胆なコスト削減による国際競争力強化策に取り組んでいる。また長期的な観点から、構造改革が必要であり、人材育成の強化、情報技術の革新、金融機関が能動的に動けるような環境整備に取り組むこととしている。
    アジアは教育レベルの高さ、労働者の勤勉さ、貯蓄率の高さといった長所を持っており底力がある。これらの良さを活かしつつ、日本の政府・経済界とも協力して、アジア経済の再活性化に努めていきたい。


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