第556回常任理事会/10月6日
常任理事会では、北朝鮮情勢ならびにコンピュータ西暦2000年問題への対応について、防衛庁防衛研究所の武貞秀士第二研究部第三研究室長、通産省の広瀬勝貞機械情報産業局長からそれぞれ説明を聞いた。
98年4月にパキスタン、7月にイランが弾道ミサイルを発射したが、いずれも北朝鮮が関与している疑いが濃厚である。6月には北朝鮮自ら弾道ミサイルの輸出を認めた。8月31日のミサイル発射はこのような中で起こった。ミサイルが発射されたのは、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)による北朝鮮向け軽水炉建設の分担金に関する文書の署名前日というタイミングであったが、それを念頭に発射したということは考えにくい。他方、継続中の米朝協議が念頭にあったことは間違いない。さらに、9月5日の最高人民会議で金正日氏が国防委員長に再任されることへの祝砲の意味もあったと推測される。
7月のイランによるテポドン発射によって、北朝鮮はその射程距離を事前に十分把握していたと考えられる。人民軍の動きも平常と変わらないものであったことを考えると、戦争を覚悟していた訳ではない。先ず軍事技術的にも十分な見通しを持ってミサイルを発射したと見るのが妥当である。即ち、
今回のミサイル発射によって、日本人の防衛意識は大きく変わった。また、日米韓三国の対応に温度差が生じた。米国政府内でも、国務省と国防総省で反応が異なっている。さらに、中国が北朝鮮を支える姿勢を明確にした。
今年の食糧生産は350万t程度になる。コメの作柄はやや良である。工場稼働率は17%程度とかなり悪い。鉱山は順調に稼動しているが、重油が不足しているため、火力発電所がストップし、停電が頻発している。餓死者も相当数出ている。
先の最高人民会議では、軍中心の体制が確立された。全権を持つ国防委員長に金正日氏が再任され、一人体制が明確になった。国家主席に就任しなかったことで、権力構造が揺らいでいるとの見方があるが、国家元首の地位にあることは間違いない。
外交面では、米国を優先し日本は後回しにするだろう。また、南北対話に直ぐ入るのではなく、当面、韓国の内部分裂を図り、対北朝鮮強硬派を追い出そうとするだろう。さらに、ロシアを牽制しながら、中国への傾斜を深めることになろう。
北朝鮮の政策には一貫性がある。崩壊寸前と思わせることで諸外国から援助等を受ける一方、軍事力を強化し、人民軍の忠誠心を高めるとともに、米朝協議を睨みながら淡々とミサイル開発を進めている。こうした中で、日本の安全保障上、北朝鮮のウェイトが増した。
ミサイル発射事件の直後に日米韓三国の外相協議が行なわれたが、北朝鮮による核開発疑惑以来開催されている同協議の意義が高まった。また、北朝鮮への対応は日米関係に深く係ることが再確認された。さらに、金大中韓国大統領の来日にあたっての焦点は、安保対話の推進と将来的な安保協力である。今回の来日で、今後数十年にわたり両国関係を規定する枠組みが作られることになろう。
日本政府は米韓両国とは一線を画する形でKEDOの軽水炉建設分担金に関する文書への署名を棚上げしている。この姿勢の転換を求める声があるが、日本としては急いで署名する必要はない。また、今回発射されたのはミサイルではなく人工衛星であるとの情報があるが、日本として独自の情報を持っていれば、外部情報に振り回されることはない。その意味で、日本としては、米国と協調しつつ偵察衛星を開発すべきである。また、抑止力を高めるため、TMD(戦域ミサイル防衛)も推進すべきである。さらに、日米防衛協力ガイドラインの国内法整備を進める必要がある。
今やコンピュータはネットワークで世界中とつながっており、「2000年問題」が発生すると、その影響が世界中に及ぶことになる。金融、交通、情報通信、エネルギー、医療分野をはじめ早めの対応が必要である。わが国では、以前から2000年問題への対応を進めてきているが、2000年1月1日まで500日を切ったこともあり、最後の総仕上げをお願いしているところである。
政府の高度情報通信社会推進本部では、さる9月11日に「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」を決定した。同計画のポイントは、
各企業には、
米国では、2000年問題への対応に関する情報公開法が近く発効する。同法には、民間企業が2000年問題への対応について事前に情報公開した場合は、その情報に基づき対応した者から訴えられることはない等の条項があり、民間企業が情報の共有を進めることを狙っている。米国企業と取引がある企業は同法に十分配意する必要がある。